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平成30年3月28日
エネルギー・医療・産業・宇宙分野に広がるプラズマ研究
-自然科学研究機構シンポジウム開催報告-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 

 自然科学研究機構では、平成17年度から、科学に係る最先端の研究について一般の方に分かりやすく説明する「自然科学研究機構シンポジウム」を開催しています。平成30年3月11日(日)には、核融合科学研究所の企画・運営により、25回目となるシンポジウムを名古屋大学において開催しました。そこで今回は、シンポジウムの開催報告として、エネルギー開発から、医療・産業、そして宇宙など、様々な分野で活用されるプラズマの研究についてご紹介します。
 プラズマは、物質の第4の状態とも呼ばれ、物質が電離して原子核(イオン)と電子がばらばらになった状態を指し、一般的には数千度以上の高温となります。核融合科学研究所が行っている核融合発電の実現を目指したプラズマ研究では、超高真空にした装置の中に1億度を超えるような超高温のプラズマを生成しますが、私達の身の周りには、その他にも、ロウソクの炎(約2,000度)やオーロラ(約1万度)、太陽(約1,500万度)など、様々な温度のプラズマが存在します。プラズマの温度や密度に応じた性質を利用して、幅広い分野でプラズマを活用する研究が進められています。
 まず、医療分野においては、大気圧下で発生させた1,000度以下の低温プラズマを活用し、プラズマ医療科学の研究が行われています。「がん」はがん細胞が異常に増殖することで発生しますが、がん細胞に低温プラズマを照射すると、がん細胞が自滅(アポトーシス)することが発見されています。プラズマの照射によって、中枢神経細胞の再生や止血、炎症の軽減等の現象が見られることも分かり、新たな医療創成の可能性が示されています。また、数万度程度の高密度プラズマは、人工骨や人工歯根の素材となる生体材料の研究に活用されています。骨や歯を構成するリン酸カルシウムを溶かした過飽和溶液中に生体材料を置き、レーザーを照射して生体材料の表面にプラズマを生成すると、リン酸カルシウムが成膜され、生体材料が骨と良く馴染み、異物反応を起こさないようにすることができます。さらに、この過飽和液に適切な濃度でフッ素を添加してプラズマ照射すると、材料の表面においてフッ素とリン酸カルシウムがナノサイズで複雑に結合し、生体材料に酸や虫歯菌に強いという表面機能を付与できることも分かり、これらの技術を利用した機能性材料の研究が進められています。
 そして、産業分野では、温度が数千度ほどの大気圧プラズマが活用されています。パソコン等の電子機器に使用されているトランジスターの大きさは、最先端のもので100ナノメートル(1ミリメートル1万分の1)以下と非常に微細です。この超微細なトランジスターの成形工程のうち、成膜とエッチングにプラズマが利用され、特にエッチングでは不可欠です。エッチングは、酸化膜を成膜した基板をプラズマに晒すことで、プラズマ中のイオンが酸化膜の不要な部分だけを削って溝を形成することを言います。このプラズマ処理の技術が超微細なトランジスターの成形を可能にしています。
 自然界に目を向けると、宇宙ではプラズマが最も一般的な物質の状態であり、太陽や宇宙空間はプラズマで満たされています。太陽では、黒点に現れる磁場に蓄積されたエネルギーが磁場のつなぎ換え(磁気リコネクション)によって解放されて大量のプラズマが放出される現象(太陽フレア)が、突発的に生じます。放出されたプラズマが地球に到達することで、GPS等の測位システムの障害や大規模停電など、現代社会に致命的な影響を与える可能性があるため、太陽フレアの発生や地球への影響等を正確に予測する「宇宙天気予報」の研究が行われています。
 このような多種多様なプラズマの研究について、シンポジウム当日は、核融合科学研究所・長壁正樹 教授、名古屋大学・石川健治 特任教授、芝浦メカトロニクス株式会社・イヴァン・ガナシェフ 技監、産業技術総合研究所・大矢根綾子 主任研究員、名古屋大学・草野完也 教授にご講演いただき、約230名が参加しました。自然科学研究機構シンポジウムは、毎年度2回開催しており、今後も最新の研究成果等について発信していきますので、皆様、ぜひご参加ください。

 

以上