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平成30年7月18日
プラズマ中に生じる流れの研究
-流れがプラズマに及ぼす影響の解明を目指して-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 「流れ」という言葉は、「川の流れ」「空気の流れ(気流や風)」「人の流れ」など、よく耳にする言葉かと思いますが、プラズマにも流れが存在します。プラズマは、電気を帯びた粒子(イオンと電子)からなる気体(電離気体)であり、それぞれの粒子は自由に運動していますが、その粒子が集団としてある方向へと移動することがあります。この集団移動がプラズマの流れです。今回は、大型ヘリカル装置(LHD)で進めている、プラズマ中に生じる流れの研究を紹介します。
 LHDでは磁場で高温のプラズマを閉じ込めています。高温のプラズマ中に生じる流れは、プラズマの性能に影響を及ぼすことが、これまでの研究によって明らかになっています。例えば、流れの速さが場所によって異なり、速い流れや遅い流れがあると、プラズマの閉じ込めが改善し、プラズマを高温に保ちやすくなると言われています。プラズマ中の流れがどのように形成され、どのような役割を果たしているのかを更に詳しく明らかにすることができれば、プラズマの制御に役立てることができると期待されています。
 さて、一般的に流れには、どのようにして生じるかによって、2つの呼び方があります。タライの中にホースをいれて、水を注ぎこむと回転する流れができますが、このような流れを外部から引き起こされた流れと呼びます。一方、お味噌汁を作る時に、鍋の中をかき混ぜなくても、底から湧き上がってくるような流れを見たことがあるかと思います。そこでは、鍋の底で加熱されたお湯は、軽くなって上昇し、表面で冷やされて再び底に沈むことによって、流れが生じます。つまり、温度差があることによって、自然と流れが生じるのです。このような流れを自発的な流れと呼びます。プラズマ中にも、外部から引き起こされた流れと、自発的な流れの両方が発生します。
 まず、プラズマ中に生じる自発的な流れに注目し、どのような場合に発生するのか、LHDで実験を行いました。その結果、プラズマを構成する粒子のうち、イオンの温度が高いプラズマを生成すると、その中に自発的な流れが生じることが観測されました。プラズマに高速粒子ビームを入射して中心部のイオン温度を上げると、温度の低い周辺部分との温度差が大きくなるため、温度差による自発的な流れが発生したのです。さらに、このような自発的な流れは、プラズマに電磁波を入射して、プラズマを構成する粒子のうち電子を加熱した時にも、発生することが明らかになりました。
 次に、プラズマ中に生じる外部から引き起こされた流れに注目した実験も行いました。プラズマに高速粒子ビームを入射すると、イオン温度の上昇とともにプラズマの中心部にビームによって引き起こされた流れが発生します。LHDでは、高速粒子ビームのパワーを調節することによって、イオン温度の上昇を抑え(プラズマの温度差を小さくして)、自発的な流れの発生を意図的に小さくした状態で、高速粒子ビームによる流れをプラズマ中に引き起こすことができます。これを利用して、高速粒子ビームが引き起こす流れそのものについて、詳しく調べてみました。高速粒子ビームの入射方向は、ドーナツ形状のプラズマを上から見た場合、時計回りの方向(正の方向)と反時計回りの方向(負の方向)があります。時計回り、反時計回りのビームをそれぞれプラズマに入射した場合、プラズマ中には、どちらも入射方向と同じ向きの流れが、すばやく同じ程度の速さで引き起こされます。さらに、今回の実験では、どちらの方向に入射した場合も、しばらくすると、流れの向きがゆっくりと時計回りの方向(正の方向)へと変化していくことを観測しました。つまり、外部から引き起こされた流れの速さが、ゆっくりと変化していくことが分かったのです。このゆっくりとした変化は、これまで予想されていない新しい現象であり、外部から引き起こされる流れも、予想以上に複雑であることが明らかになりました。現在、この変化の原因は、プラズマの粘性(流れにくさ:粘性が強いと流れにくい)の変化によって生じているのではないかと考えています。
 このように、プラズマ中に生じる流れは、外部から引き起こされた流れや、自発的な流れ、さらに、プラズマの粘性の変化など、様々な現象が複雑に関係しあって生み出されることが分かってきました。今後、さらに詳細に調べることで、プラズマ中の流れがどのように形成され、どのような役割を果たしているのかを明らかにし、流れを利用したプラズマの制御方法の開発に貢献することを目指しています。

以上

図1.プラズマに反時計回りの方向(負の方向)で高速粒子ビームを入射し、イオン温度が高いプラズマを生成した時の流れの空間分布。高速粒子ビームを入射する前(青線)と入射した後(赤線)を比べると、プラズマの中心部(位置3.6mの付近)では、ビームの入射方向(負の方向)と同じ向きの流れ(赤矢印)が生じています。これは、外部から引き起こされた流れです。中心から外れたところ(位置4.2mの付近)では、ビームの入射方向とは逆の方向(正の方向)に変化(青矢印)しています。この変化は、自発的な流れによるものです。

図2.異なる入射方向の高速粒子ビームをプラズマに入射した時の、中心部での流れの速さの時間変化。高速粒子ビームの入射によって、すばやく(3.8秒から4秒の間)、それぞれ入射方向と同じ向きの流れが生じます。しかし、その後(4秒以降)は、どちらの方向に入射した場合も、流れが正の方向へ向かってゆっくりと変化していきます。この、ゆっくりとした変化は、外部から流れを引き起こした場合に観測されます。