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平成31年1月16日
地上の太陽から熱を受け取る金属
-冷却機能を担う分散強化銅の開発-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 太陽など宇宙の星々は、核融合反応によって輝いています。核融合発電は、地上で核融合反応を起こし、発生したエネルギーを取り出して発電します。これを実現するためには、核融合炉で発生するエネルギーを受け取る機器の開発も重要な課題の一つです。今回は、そのような機器の製作のために欠かせない新材料の開発研究を紹介します。
 大型ヘリカル装置(LHD)では、磁場のカゴで高温のプラズマを閉じ込めていますが、プラズマの粒子は少しずつカゴの外へと出てきます。その粒子をダイバータという機器で受け止めています。そこで粒子のエネルギーは熱に変わり、その結果、ダーバータの表面は高い熱負荷(単位面積当たりの熱の量)を受けることになります。将来の核融合炉では、ダイバータへの熱負荷は更に高くなり、宇宙ロケットのエンジンスカートの内壁と同程度になると見込まれています。そこで、核融合科学研究所では、除熱性能を高めたダイバータの開発研究を進めています。ダイバータでは、プラズマに面した部分で発生した熱を、配管に冷却材(水のような輸送可能な物質)を流して除熱します。ダイバータの冷却能力を高めるためには、表面で発生した熱を効率良く冷却材に伝えることが必要です。そのため、配管等の冷却を担う部分の材料として重要となるのが「熱伝導性」、つまり、熱の伝わり易さです。そこで注目されるのが、熱伝導性が良い金属である銅(Cu)です。
 銅は十円玉の材料です。また、銅製のお鍋は高価ですが、熱伝導性が良いので美味しい料理ができると言われています。このように、私達に馴染み深い銅ですが、ダイバータの冷却部の材料としては、強度が低いという欠点を持っています。そこで、核融合科学研究所では、「分散強化(Dispersion Strengthening)」という手法を用いて、銅を高強度化する開発研究を進めています。分散強化法は、材料に異なる種類のナノレベルの大きさの粒子(強化粒子)を均一に散りばめる(分散させる)ことで高強度化するという手法で、こうして作った金属は「分散強化金属」と呼ばれています。この手法は、これまで鉄の分野で研究が行われ、飛躍的な高強度化に成功した技術として知られています(核融合科学研究所における研究はバックナンバー257を参照ください)が、銅への応用については、十分には研究されていませんでした。
 分散強化金属は、一般的には、金属を溶かし、そこに強化粒子を入れて作ります。分散強化銅についても、まずは、溶かしてつくる方法が検討されましたが、その強度は、将来的に要求される性能を見越すと十分なものとは言えませんでした。そこで、小さな粒状態の銅と強化粒子の材料(ジルコニウムやイットリウムなど)を、硬い鉄のボールと一緒に容器に入れて高速で回転させることで、すりつぶして細かな粉にし、それらを混ぜ合わせるという方法を採用しました。この混ざりあった微細な金属粉に高温で圧力をかけることにより、溶かすことなく金属の塊とします。このようにして作った試作材の強度を確認したところ、純銅よりも遙かに強度が高いことが分かりました。次に、試作材の内部に溶け込んでいる「酸素濃度」を変える研究を行いました。一般的に、金属は酸素が多く溶け込むと良い影響は出ないのですが、研究の結果、逆に強度が上がるということが明らかになりました。また、電子顕微鏡で試作材を観察したところ、酸素濃度が高いと、より細かな粒子が数多く散りばめていることが分かりました。このことから、試作材の内部で、酸素が強化粒子の材料と結びつくことによって、新たに強化粒子が生成されているのではないかと考えています。
 さらに、これまでに例のない新たなプロセスを導入した分散強化銅の製作に挑戦し、試作材の製作に成功しました。新たなプロセスとは、粒状態の銅と強化粒子の材料をすりつぶしてかき混ぜている途中で、強化粒子生成を促す新たな添加材(酸化銅)を加えるというものです。つまり、強化粒子の生成量を制御しながら、分散強化銅を製作するという方法です。この方法を確立できれば、分散強化金属の開発研究に大きく貢献すると期待されます。現在、この新しい分散強化銅の強度の検証を進めています。研究の更なる進展をご期待ください。

以上

左図:純銅と分散強化銅(DS-Cu)の強度の比較。下図の縦軸は強度を表します。分散強化銅2は、純銅1より高強度です。酸素の含有量が多い分散強化銅3は、強化粒子が増加して、より高強度になりました。

右図:粒状態の銅と強化粒子をかき混ぜている途中で酸化銅を加えるという新プロセスを導入し、新たな分散強化銅の製作に成功しました。