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令和元年12月4日
ヘリカルプラズマにおける高エネルギー粒子の閉じ込めを実証
- 将来の核融合炉プラズマの持続燃焼に見通し -
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 将来の核融合炉では、1億2000万度以上の超高温プラズマ中で生じる核融合反応により、高いエネルギーを持つ粒子が生成されます。そして、この高エネルギー粒子が、そのエネルギーをプラズマに与えることによりプラズマを加熱し、超高温状態を維持します。これにより、核融合反応を持続させること(持続燃焼)が可能になり、エネルギーを持続的に発生させて発電が実現します。このことから、高エネルギー粒子がプラズマを十分に加熱できるように、高エネルギー粒子をプラズマ中に良好に閉じ込められるかどうかが、核融合発電の実現の鍵を握っています。核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)では、高エネルギー粒子の良好な閉じ込めを実証することに成功し、将来の核融合炉プラズマの持続燃焼に見通しをつけました。

 LHDではプラズマを閉じ込めるための磁場を、ドーナツ型のプラズマの外部に配置したコイルのみにより生成します。これをヘリカル型と呼びますが、他に、外部コイルに加えてプラズマの中に電流を流すことにより閉じ込め磁場を生成するトカマク型があります。核融合発電には定常運転が不可欠ですが、トカマク型はプラズマ中に電流を流し続けることが課題であるのに対し、ヘリカル型は原理的に定常運転が可能です。高エネルギー粒子の閉じ込めについては、これまでトカマク型装置では多くの実験が行われ、その閉じ込め性能が調べられてきました。しかし、ヘリカル型装置については、高エネルギー粒子の閉じ込め性能の理論予測はありましたが、実験による検証は行われていませんでした。
 LHDでは、2017年より重水素ガスを用いてプラズマを生成する実験(重水素実験)を行っています。重水素実験では、非常に小さな割合ですが重水素同士による核融合反応が生じて、その反応による高エネルギー粒子がごく僅かに生成されます。このごく僅かな高エネルギー粒子に注目することで、従来の軽水素プラズマ実験では不可能だった、高エネルギー粒子の閉じ込めに関する研究が可能になりました。プラズマ中に閉じ込められている高エネルギー粒子を直接検出することはできませんが、この高エネルギー粒子は2次的に核融合反応を起こして、極めて微量ですが、この反応による中性子が発生します。つまり、この極めて微量な中性子を検出できれば、高エネルギー粒子の閉じ込め性能が測定できるのです。そこで、研究グループは、このごく微量な中性子を選択的に検出するために、特殊な光ファイバーを用いた検出器を約2年の歳月を重ねて開発しました。そして、その検出器をLHDに設置して、高エネルギー粒子の閉じ込め性能を測定することに成功しました。測定結果は、高エネルギー粒子がプラズマ中に良好に閉じ込められていることを示しており、これにより、世界で初めてヘリカル型装置における高エネルギー粒子の閉じ込めを実証することができました。さらにLHDは、同じ太さのプラズマを持つトカマク型装置と同等の高エネルギー粒子の閉じ込め性能を有することも分かりました。
 このように、定常性に優れたヘリカル型装置において、高エネルギー粒子の閉じ込めを実証し、将来のヘリカル型核融合炉におけるプラズマの持続燃焼に見通しをつけることができました。今後は、LHDにおいて高エネルギー粒子のより優れた閉じ込めを実現できるプラズマを探求し、核融合炉の早期実現に向けた研究を展開します。

以上

新たに開発した微量中性子検出器

図1 新たに開発した微量中性子検出器。特殊な光ファイバーを用いて、極めて微量な中性子を検出することにより、高エネルギー粒子の閉じ込め性能を測定します。

LHDにおける高エネルギー粒子の閉じ込め性能の測定結果(左)とドーナツ型のプラズマの模式図(右)

図2 LHDにおける高エネルギー粒子の閉じ込め性能の測定結果(左)とドーナツ型のプラズマの模式図(右)。測定結果は、高エネルギー粒子の良好な閉じ込めを示しています。またドーナツ型のプラズマを中心軸に向かって内側に寄せること(緑矢印)でより優れた高エネルギー粒子の閉じ込め性能が得られること(青矢印)が分かります。この結果は理論予測と一致しています。高エネルギー粒子の閉じ込めの指標の最大値は、ドーナツ型のプラズマを中心軸に向かって最も内側に寄せた時に得られ、その値は、同規模のトカマク型装置における値とほぼ同じです。