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プレスリリース
超高温プラズマ中の温度の変化が高速で伝わる様子を

 

平成23年9月29日

大型ヘリカル装置における核融合炉を目指した高温プラズマ実験において、これまで明らかとされていなかったプラズマの温度の変化が長い距離を高速で伝わる様子を、九州大学の稲垣滋准教授(核融合科学研究所・客員准教授)らが核融合科学研究所での共同研究により、世界で初めて確認しました。その成果は世界で最も権威ある物理学の学術誌であるフィジカル・レビュー・レターズ誌の2011年9月9日号において発表されました。

核融合反応を可能とするには1億度を超えるプラズマを生成し、保持する必要があります。プラズマは超高温のガスであり、これを閉じ込めるためには容器ではなく、磁場の力を使います。この磁場による超高温のプラズマの閉じ込め性能をより高めることが将来の核融合炉の早期実現につながります。プラズマは磁場によって閉じ込められておりますが、この磁場を横切って、温度や密度の揺らぎがゆっくりと伝わることは広く知られていました。一方、プラズマの中心の変化が、周辺部へ磁場を横切って、この説明よりも100倍以上速く伝わる現象が20年ほど前から様々な実験で報告され、大きな謎になっていました。これは変化がすぐ隣に順番に伝わるというよりも、長い距離をいきなり伝わっているように見えることから、長距離相関という問題として、核融合プラズマだけでなく、いろいろな物質で議論されている興味深い課題です。

稲垣准教授らは、プラズマの揺らぎをプラズマ全体にわたって分析する手法を考案し、異なった場所の揺らぎの間で、互いに影響する強さを調べました。この分析を通して、高温となっているプラズマの中心から温度の低いプラズマの周辺部にわたって長い距離を伝わる大きくて速い動きを抽出することに成功し、この動きによってあるところで生じた変化が長い距離を短い時間で移動している様子を世界で初めて確認しました。

今回の発見は、将来、核融合炉におけるプラズマの変化をより正確に予測し、プラズマを制御する方法を確立することに大きく寄与するものです。

国際的にも「この発見は、核融合プラズマ研究を進める上で、更なる実験と理論の動機付けとなるばかりか、流体や天体などの広い分野の物理学者にとっても非常に興味深い。」と物理学全体へ大きく波及すると評価を受けています。

核融合科学研究所では我が国独自のアイデアに基づいて、ねじれたドーナツ形状の磁場を超伝導の電磁石で作り、これによって超高温のプラズマを閉じ込める研究を行っています。この大型ヘリカル装置(LHD)は、大学共同利用機関の共同利用装置として、大学をはじめとする研究者による共同研究に利用されています。

 

原題“Observation of Long-Distance Radial Correlation in Toroidal Plasma Turbulence”
和訳「環状プラズマ乱流における長距離径方向相関の観測」
著者 稲垣滋(九州大学・准教授、核融合科学研究所・客員准教授)、徳沢季彦(核融合科学研究所・助教)、伊藤公孝(核融合科学研究所・教授)、居田克己(核融合科学研究所・教授)、伊藤早苗(九州大学・教授)他16名

 

 

補足説明

大型ヘリカル装置のプラズマを上から見た図1.大型ヘリカル装置の赤道面上のプラズマを上から見た図。凸凹したドーナツ形状をしている。この大型ヘリカル装置で生成し、閉じ込めたプラズマで起こる揺らぎを複数の計測器で観測。
 MAG:磁場の揺らぎを測定する計測器。黒点で示す場所に設置
 RM:プラズマ中の電子密度の揺らぎを測定する計測器。示した方向にプラズマ中を横断して観測できる。
 ECE:プラズマ中の電子温度の揺らぎを測定する計測器。示した方向にプラズマ中を横断して観測できる。

2.上の各種の計測器で観測される揺らぎの間の関係を調べ、互いに影響しあう関係の強さを分析した。その結果、下図にあるように、プラズマ中心部から周辺部へと長くつながる動きを抽出することに成功。この動きは毎秒1km以上と極めて速く、プラズマ中心部から周辺部へと変化を1,000分の1秒以下の短い時間で伝える。この移動距離はプラズマ断面の半径(大型ヘリカル装置では約60cm)の50%程度にわたる。

図右図:
縦軸はプラズマ断面の半径。0が中心、1.0が端で、1.0が約60cmに当たる。横軸は時間。色は揺らぎの関係の強さを表す。強い関係をもった変化が千分の3秒程度で、断面半径の半分程度を伝わる。