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乱流の強度だけでなく空間構造も重要
核融合プラズマでは、密度や温度の小さなゆらぎが成長して乱流を生み、熱や粒子を外へ運びます。そのため、乱流はプラズマをどれだけ効率よく閉じ込められるかを左右する重要な現象です。乱流は細かな渦が空間全体に一様に広がるだけではなく、ある場所に集まって局在したり、大きな流れと結びついて秩序だった構造をつくったりすることもあります。こうした「乱流がどこに、どのような形で存在するか」という空間構造を捉えることが、輸送の仕組みを理解する鍵になります。
乱流をデータ駆動的に選ばれるパターンで分解する
乱流を調べる代表的な方法のひとつとして、複雑な空間構造を空間全体に広がるさまざまな波の重ね合わせとして表すフーリエ分解が広く使われてきました。一方、局在した構造を調べるには、その形をなるべく保ったまま分析できる方法が望まれます。そこで本研究では「多重場特異値分解」を用いました。これは、密度や温度など複数の物理量のデータから、フーリエ分解のようなあらかじめ決められた波の形ではなく、その特徴的なパターンをデータ駆動的に取り出す方法です。「どんな構造があるはずか」という先入観をできるだけ置かず、乱流自身が持つ自然な成分で表現できることが特徴です。
エネルギーだけでなく「情報量」を測る
さらに、取り出したパターンがどのくらい多様か、また互いにどのくらい結びついているかを「情報量(エントロピー)」として測りました。ここでいうエントロピーとは、さまざまなパターンがどの程度多様に現れているかを表す指標です。少数のパターンが支配的なら情報量は小さく、多くのパターンが同程度に現れれば大きくなります。ここでヒントになったのが量子情報理論です。量子状態を表す「密度行列」や、状態の複雑さを測る「フォン・ノイマンエントロピー」などと、乱流を特異値分解したときの数学的な形がよく似ています(図1)。この数学的な類似を利用することで、次の段落で示すように乱流を「エネルギー」だけでなく「情報」という新しい視点から調べられるようになりました。
見えなかった状態の変化を捉える
図2は、乱流を駆動する密度勾配を変えたときの結果です。上段のエネルギー比を見ると、密度勾配がある程度大きくなるまで、プラズマ中に自発的に生じる大きな流れである「帯状流」が支配的な状態が続いているように見えます。ところが下段のフォン・ノイマンエントロピーは、それより前の段階で急に増加しています。つまり、全体のエネルギー配分には大きな変化がなくても、内部では乱流をつくるパターンの多様性がすでに大きく変化していたことを示しています。従来のエネルギー診断だけでは見えにくかった状態遷移を、情報量によって捉えられました。
(位相空間乱流ユニット 助教)

