メタ階層ダイナミクスユニット

研究概要

核融合としての課題

プラズマ核融合における科学研究の対象は、原子・電子の微視的スケールから、流体・固体・プラズマ・装置実機といった巨視的スケールまで非常に幅広く分布している。プラズマ特有の集団運動としての挙動は、プラズマそれ自体だけでなくプラズマと接する物質に多様な現象を引き起こす。素過程だけの理解では済まされず、複合過程かつマルチスケールな現象の理解が各所で求められている。以下に一例として、本ユニット立案メンバーの注目する課題を列挙する。

  • •閉じ込め性能や燃焼効率を左右する大域的マルチスケール乱流・輸送と分布形成
  • •波動加熱時の不安定性励起に伴う加熱効率の劣化、乱流輸送の増加
  • •熱・粒子損失を引き起こす磁気リコネクションや ELM 等の突発的な不安定性発現
  • •放射損失の制御と多粒子種の循環の基礎過程である原子・分子・光相互作用
  • •核融合発電炉の耐久性と工学的成立を決定づけるプラズマ壁相互作用と炉材料
ここで挙げた例に留まらず、核融合の多くの課題は一見独立していると思われがちだが、プラズマに纏わる複合過程かつマルチスケールな現象の殆どに現れる階層構造に着目し、俯瞰した視点から共通課題として捉えることで、細分化したプラズマ核融合研究における連携の活性化を狙う。


学術的な特徴づけ(何の研究だといえるか)

幅広い時空間スケールやパラメータ領域にまたがる自然現象は、様々な「階層」で要素還元的に分離・接続することで理解が進んできた。電子とイオンの運動スケール、粒子モデルと流体モデルなどはその例である。しかし、実験・数値研究の進展に伴い顕在化してきた問題の中には、階層分離では上手く捉えられない現象も存在する。本ユニットでは、自然現象の持つ階層性に着目して問題を捉え直すことで、未解決の課題に対する突破口を見出すことを目指す。


アプローチ(定式化)

本ユニットの研究は大きく次の四項目にカテゴライズされる。ただし、独立に活動するのではなく、有機的かつ流動的な連携を行う。

  • 1. 階層性が内在する乱流・輸送の局所・⼤域的現象の解明
    複雑な階層性が内在するプラズマ乱流・輸送現象の局所・⼤域シミュレーション研究を推し進め、複数の微視的不安定性から駆動される乱流渦のマルチスケール相互作⽤やメゾスケールの⾃発流形成、揺らぎの⼤域的空間伝搬に対するスケール依存性、それらの背景磁場の幾何構造依存性について探求する。
  • 2. ⾮等⽅性速度分布下における電磁場・原⼦分⼦のエネルギーチャンネル研究
    プラズマ中の電磁場・粒⼦・原⼦分⼦という複数の物理要素が階層構造を構築し、それらの間に複雑なエネルギーチャンネルを有する。これにより⽣じる熱平衡分布からの著しいずれに着⽬することが、エネルギー輸送プロセスを紐解く事に繋がる。速度分布関数の構造・⾮等⽅3性を⾼時間分解能計測や過渡的応答を取り⼊れた物理モデルから評価する。速度分布関数に⼤きな構造が現れる現象やそれに伴うプラズマの状態やその変化を対象にした研究を中⼼に展開する。
  • 3. 周辺プラズマから物質表⾯における階層性の追及と複合過程モデリング
    階層性という共通の視点を持ってプラズマと固体材料に跨るモデリングの探求を⾏う。電⼦顕微鏡などの微細組織観察に基づく材料科学の観点も加えて、マクロな観点で制御されたプラズマ実験の結果をミクロな観点で観測し、シミュレーションと現実、かつ、ミクロとマクロの認識の橋渡しを⾏う。ナノスケールにおけるシースプラズマの理解など、集団現象を前提として記述されてきたプラズマの各種統計的記述のミクロ限界にも問題意識を持って取り組む。
  • 4. 多スケールにまたがる階層性から探る物理モデリングと普遍性の探求
    プラズマをはじめとする⾃然界のマルチスケールに跨る現象に対して、階層性ダイナミクスを表現する物理モデルの構築とそこに内在する普遍性を探求する。理論・実験問わず⽅法論開発にも取り組み、成功したモデリングや解析法等の⽅法論は随時、ユニット間で共有し、研究対象を拡⼤させていく。

学術的展開

  • 10年間で達成する目標
    核融合プラズマの諸現象を捉え直して、ミクロモデルからとマクロモデルからの寄与を再定式化し、上記の課題に精力的に取り組む。その中で得られた新手法や、階層性を持つた現象に対する一般的処方箋を持って分野内外との学術的連携を図る。
  • 予測される学術的な意義
    本活動で、核融合プラズマ※を題材に複雑な現象の織り成す階層性に着目した活動から、宇宙、素粒子、生態系など多くの科学に対して共通した活動へと波及する可能性を追求する。(※ マルチスケール乱流とフロー形成・安定性、波動・不安定性と粒子運動の共鳴、揺らぎの大域伝搬、プラズマ-固体界面、分布関数の速度空間構造・非等方性、ペアプラズマ物性・質量比依存など)

独自性、優位性など

核融合科学とは、プラズマ、原子分子、固体まで、自然界では共存しにくい現象を、実験室系において能動的に共存させ制御できる場である。例えば、プラズマ中に強力な高周波電場や高エネルギー粒子を入射することで、局所電場強度や荷電粒子の速度空間分布を自在に操ることが可能となり、シミュレーションによる予測や理論モデルの検証を効率的に実施できる。これらの特徴により、階層性の問題に対して精密な研究を展開できる。核融合研では、各分野の最前線に立つ専門家によるユニットが結集しており、本ユニットがハブとなってユニット間連携を促しながら、先鋭的な実験研究と理論シミュレーション研究という優位性を発揮できる。

キーワード

核融合科学としてのキーワード

  • 速度空間ダイナミクス
  • 多階層モデリング
  • 非平衡プラズマの高効率・大電力加熱
  • 境界層プラズマとプラズマ-壁相互作用

学際的なキーワード

  • 渦・輸送現象・自己組織化
  • 非平衡開放性と突発現象
  • 有効理論
  • 非線形波動粒子相互作用
  • 階層性を考慮したシミュレーション手法開発
  • 分子シミュレーション

メンバー

沼波 政倫 orcid 専門分野 プラズマ乱流シミュレーション、理論物理学
松岡 清吉 orcid 専門分野 ⾮軸対称磁場閉じ込めプラズマの輸送
登⽥ 慎⼀郎 orcid 専門分野 ⾼温トロイダルプラズマにおける乱流輸送
仲⽥ 資季 orcid 専門分野 運動論的プラズマ乱流の揺らぎとパターン形成
永岡 賢⼀ orcid 専門分野 位相空間ダイナミクスに注⽬した⾮線形過程の実験研究
伊神 弘恵 orcid 専門分野 ⾮線形過程を考慮した波動加熱物理
笠原 寛史 orcid 専門分野 ⾼周波波動加熱・⾮線形波動励起減衰機構の解明
⻑⾕川 裕記 orcid 専門分野 劇的変容現象の連結階層シミュレーション
後藤 基志 orcid 専門分野 プラズマ分光学
河村 学思 orcid 専門分野 プラズマ・気体/壁相互作⽤、⾮接触プラズマ
川⼿ 朋⼦ orcid 専門分野 プラズマ分光学、天体プラズマ
⾼⼭ 有道 orcid 専門分野 プラズマ−物質相互作⽤、計算機利⽤技術、情報セキュリティ
伊藤 篤史 orcid 専門分野 プラズマ−物質相互作⽤シミュレーション
坂本 隆⼀ orcid 専門分野 プラズマ−物質相互作⽤の実験研究
関 哲夫 orcid 専門分野 ⾼周波波動の励起・伝播・吸収、波動粒⼦相互作⽤

お問合せ・連絡先

メタ階層ダイナミクスユニット
Email: meta-hd(at)nifs.ac.jp
※(at)は、@に置き換えてください。