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令和2年11月11日
磁場のカゴを変形して中心部のプラズマを不純物による冷却から守る
―「中心部のプラズマは高温に、周辺部のプラズマは低温に」を目指してー
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合発電を実現するためには、1億度以上の高温のプラズマを長時間維持する必要があります。ただし、核融合反応を起こす中心部のプラズマとは違い、周辺部のプラズマは1億度以上にする必要はありません。むしろ、周辺部のプラズマは可能な限り低い温度にする方が、プラズマを閉じ込める装置の壁にかかる熱負荷を減らすために望ましいとされています。つまり、「中心部のプラズマは高温に、周辺部のプラズマは低温に」という相矛盾する性質を両立させることが要求されています。最近、プラズマ実験装置である大型ヘリカル装置(LHD)において、この要求に応える研究に大きな進展がありました。
 これまで、周辺部のプラズマの温度を下げて装置の壁にかかる熱負荷を減らすために、少量の不純物(例えば、ネオン、窒素など)を周辺部のプラズマに混入させるという方法が研究されてきました。この方法により、確かに周辺部のプラズマの温度は下がるのですが、その一方で、不純物が中心部のプラズマに侵入し、中心部のプラズマの温度も下がってしまうことがしばしば起こります。LHDでは、この課題の解決に取り組み、プラズマを閉じ込めている磁場のカゴを少しだけ変形させることで、中心部のプラズマの温度を維持したまま、周辺部のプラズマの温度だけを下げることに成功しました。
 LHDでは、強力な超伝導コイルを使ってプラズマを閉じ込める磁場のカゴを生成していますが、この超伝導コイルに加えて補助コイルも設置しています。補助コイルが生み出す磁場は超伝導コイルが作るカゴ本体の磁場の1000分の1程度ですが、このコイルを用いて、磁場のカゴを少し変形して、その影響を調べる研究が行われています。今回は、この補助コイルを用いて、磁場のカゴの周辺部を少し変形して「磁気島」と呼ばれる構造を作りました。通常の磁場のカゴの断面は木の年輪のような同心円状ですが、磁気島は木目に現れる節のような構造をしています。この構造が、あたかも海に浮かぶ“島”のように見えることから「磁気島」と呼ばれています。通常、磁気島はプラズマの閉じ込めを劣化させることが多いのですが、今回の実験では磁気島をできるだけプラズマの周辺部に作り、中心部のプラズマに影響がないように工夫しました。つまり、このような構造にすることで、周辺部のプラズマを中心部のプラズマから“切り離し”、周辺部のプラズマだけを冷やすことを試みました。
 実験では、周辺部のプラズマに少量の不純物を入れ、その不純物による発光がどのように変化していくかを特殊な計測器を使って観測しました。不純物はプラズマからエネルギーを受け取り、それを光に変えて放出(発光)することによりプラズマを冷やします。磁気島が無い場合は、不純物の発光はプラズマの周辺部から徐々に中心部へと入っていき、結果として中心部のプラズマの温度が下がってしまいました。それに対し、周辺部に磁気島を作った場合は、不純物の発光は磁気島がある場所にとどまり、中心部には侵入していきませんでした。これにより、周辺部に磁気島を作ることで、中心部への不純物の侵入を防ぎ、その結果、中心部のプラズマの温度を維持したまま、周辺部のプラズマの温度だけを下げられることが実証されました。
 今回の実験結果は、「中心部のプラズマは高温に、周辺部のプラズマは低温に」を両立させるための新たな知見として非常に重要なものであり、将来の核融合炉の設計研究にも大きく寄与することが期待されます。

以上

プラズマを閉じ込める磁場のカゴの構造

図 プラズマを閉じ込める磁場のカゴの構造。(a)通常の場合。磁気面と呼ばれる磁場のカゴが入れ子状になっています。中心部(閉じ込め領域)のプラズマを高温に、周辺部のプラズマを低温にする必要があります。(b)磁気島が形成された場合。今回の実験では、磁気島をできるだけ周辺部に作りました。