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令和3年5月26日
電子温度・イオン温度共に1億度のプラズマを達成、LHD研究は新たな段階へ
― プラズマの乱流と不安定性の研究が大きく進展 ―
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合発電は、1億度という高温のプラズマ中で生じる核融合反応によるエネルギーを利用するものです。核融合発電の実現を目指し、磁場で高温のプラズマを閉じ込める研究が世界中で行われています。核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)では、2020年度のLHD重水素プラズマ実験で、電子温度・イオン温度共に1億度に達するプラズマの生成に成功しました。今回の成功によって、1億度に達するプラズマの生成法を確立することができ、LHDの研究は新たな段階に入りました。

 核融合発電の実現には、高温のプラズマを長時間にわたって安定して維持することが必要であり、この安定維持に向けた多くの課題があります。磁場で閉じ込めたプラズマは、核融合反応を起こす中心部は1億度以上の高温を維持する一方で、周辺部のプラズマは、プラズマを閉じ込める装置の壁への熱負荷を減らすために、できるだけ低温にすることが求められます。この温度勾配は、約1メートルで1億度という極めて急峻(きゅうしゅん)なものです。温度勾配が急峻になるとプラズマ中に大小様々な渦を伴った不規則で乱雑な流れ(乱流)が発生し、この乱流がプラズマをかき混ぜて中心温度が低くなってしまいます。また、プラズマの圧力勾配が急峻になるとプラズマが不安定になり、閉じ込めたプラズマの一部が失われることもあります(この現象を不安定性と呼びます)。このため、プラズマの安定維持のためには、乱流と不安定性を理解し、それを制御する方法を確立することが必要です。
 2020年度のLHD重水素プラズマ実験では、様々な物理を調べるために、重水素と軽水素の水素同位体を混合したプラズマを用いて実験を行いました。これにより、乱流と不安定性について新たな発見がありました。乱流に関しては、プラズマの中心部と周辺部で全く異なる制御を必要としていることを見出しました。プラズマ中心部では、乱流を小さくすることで急峻な温度勾配が形成されるのに対し、周辺部では、乱流を大きくすることで、装置への熱負荷が減ることが分かりました。したがって、プラズマ中心部で乱流を抑制し、周辺部では逆に増大させるという制御が望ましいとことが明確になりました。また、プラズマをかき混ぜて水素同位体を均一にする効果を持つ乱流(バックナンバー335をご参照下さい)の詳細も明らかになりました。核融合にとってマイナス面が強調されてきた乱流に、プラス面があることを実験で明らかにしました。
 圧力勾配が急峻になると発生するプラズマの不安定性には、緩やかに現れて持続するものと、突然現れるものがあります。突然現れる不安定性は、地震のように「いつ起こってもおかしくないが、いつ起こるか分からない」という性質を持っています。この突発型については、「きっかけ」と「プラズマへの影響」の解明に、重要な実験結果が得られました。
 乱流や突発型不安定性は、核融合のプラズマだけでなく、宇宙や地球で生起する様々な現象にも深く関わっていると考えられています。今後、LHDでは、そのような学際的な研究も推進していく予定です。

以上

LHD