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プレスリリース
将来の核融合炉プラズマの計測手段として期待できる「プラズマの電磁波」を大型ヘリカル装置(LHD)実験において
世界で初めて観測

将来の核融合プラズマの計測手段として大きな期待核融合研の東井和夫教授ら、フィジカル・レビュー・レターズ誌
10月1日号で発表

平成22年10月8日

 大型ヘリカル装置における核融合炉を目指した高温プラズマ実験において、将来の核融合反応プラズマの計測手段として期待できるプラズマの電磁波を世界で初めて観測しました。その成果は世界で最も権威ある物理学の学術誌であるフィジカル・レビュー・レターズ誌の2010年10月1日号において発表されました。

 核融合反応を可能とするには1億度を超えるプラズマを生成し、保持する必要があります。プラズマは超高温のガスであり、これを閉じ込めるためには物質でできた容器ではなく、磁場の力を使います。核融合科学研究所では我が国独自のアイデアに基づいて、ねじれたドーナツ形状の磁場を超伝導の電磁石で作り、これによって超高温のプラズマを閉じ込める研究を行っています(図1)。これが大型ヘリカル装置(LHD)です。

 東井教授らは、LHDにおいてらせん状の磁力線のねじり具合を変化させ、プラズマから発生する電磁波に注目した実験を行いました。その結果、特有の周波数変化を伴う波を世界で初めて観測し、その特徴を明らかにしました。

 このような周波数変化を示すプラズマの波は、特に将来、核融合反応によって生じた高速のヘリウム粒子によって強く現れるものと予想され、その特性解明が核融合研究の最重要課題のひとつとなっています。核融合で燃えるプラズマは、この高速のヘリウム粒子のエネルギーによってプラズマの温度が保たれるからです。核融合反応を維持するには反応で生ずる高速のヘリウム粒子の閉じ込め制御が不可欠であり、今回の観測は、将来の核融合反応プラズマと反応で生ずるヘリウム粒子との相互作用を精度良く理解する上での学術的基礎を与えるものです。

 核融合炉ではプラズマ内部構造を計測するための計測機器の設置には制約が多く、核融合炉付近の厳しい条件下でも使用可能な簡便かつ信頼性の高い計測手法の開発が不可欠です。今回観測された特徴的な周波数変化を示す波を簡便な手法でモニターすることにより、閉じ込め磁場であるらせん状磁力線のねじり具合に関する精度の高い計測が可能となることが期待され、核融合炉に適した新たなプラズマ計測法の開発につながります。

図1 プラズマを閉じ込める磁力線:磁場による閉じ込め容器
図1 プラズマを閉じ込める磁力線:磁場による閉じ込め容器