HOME > ニュース > プレスリリース > 「プラズマシミュレータ」の性能向上
平成27年6月1日
自然科学研究機構 核融合科学研究所(岐阜県土岐市、所長:竹入康彦/以下、本研究所)は、このたび、核融合発電の実現を目指した学術研究に活用するため、スーパーコンピュータシステム「プラズマシミュレータ」を、従来システム比で8倍以上の2.62PFLOPSの演算性能を有するシステムへと更新し、本日6月1日(月)から稼働を開始しました。今回の更新により、核融合プラズマの物理機構の解明のためのシミュレーションが、より大規模かつ短期間で可能となります。
本研究所は、大学共同利用機関として国内外の大学や研究機関等と協力し、海水中に含まれるリチウムと重水素を燃料とする、核融合発電の実現に向けた学術研究を推進しています。将来の核融合発電では、原子核と電子がばらばらになって飛び回るプラズマを、1億度以上の高温の状態で安定に閉じ込めておく必要があります。本研究所では、我が国独自の研究に基づいて設計された「大型ヘリカル装置(LHD)」(以下、LHD)による高温・高密度プラズマの生成・閉じ込め研究や、スーパーコンピュータを駆使したLHD等核融合プラズマの理論・シミュレーション研究、核融合発電炉を建設するための核融合工学研究を、核融合発電実現のためのプロジェクトとして推進しています。今回のプラズマシミュレータの更新により、核融合プラズマの複雑な挙動の物理メカニズムの解明、実験結果の解析や予測、核融合炉材料の物性シミュレーション等を、これまで以上に大規模かつ短期間に行うことができます。
今回更新したプラズマシミュレータには、富士通株式会社のスーパーコンピュータ「PRIMEHPC FX100」を採用、新システム全体として総合理論演算性能2.62PFLOPSの性能を実現しました。これは、現在最新の「TOP500 Supercomputer Sites」(平成26年11月発表)における順位と比較した結果、日本に設置されているスーパーコンピュータの中の3番目の演算性能に相当し(*2)、従来のシステムと比較して8倍以上の性能向上となります。主記憶容量はシステム全体で81TB(テラバイト)(*3)を実装しており、本研究所で利用される大容量メモリを必要とするプログラムに対しても、最適な計算環境を実現します。また、大規模シミュレーションには膨大な数値データが生成されます。このため、並列分散ファイルシステムで構築された10PB(*4)の大容量かつ高速なストレージシステムを採用し、大容量データの保存に充分耐えうる性能を実現しています。
なお、今回の性能を向上させたプラズマシミュレータの一般公開を、今秋10月24日(土)に行われる本研究所オープンキャンパス(一般公開)にて行います。
本研究所は、今後も、国内外の大学や研究機関等と協力し、将来のエネルギー問題の抜本的な解決に向け、安全でクリーンな核融合発電の実現を目指した学術研究を進めます。また、総合研究大学院大学の基盤機関として、将来の核融合研究を担う人材の育成に力を入れます。
+1 InfiniBand:装置間接続方式の一つ。主に、高い性能を有しているサーバあるいは外部記憶装置間を接続する際に利用されている。
+2 FEFS:FUJITSU Exabyte File System
補足説明
*1 PFLOPS(ペタフロップス): 浮動小数点演算を1秒間に1,000兆回実行する能力
*2 コンピュータの性能を計測するためのテストプログラムである「Linpack」を用いた現在最新の「TOP500 Supercomputer Sites」(平成26年11月発表)における順位と比較した結果。富士通調べ。
*3 TB(テラバイト): 約1兆バイト
*4 PB(ぺタバイト): 約1,000兆バイト
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所に関するウェブページ
<トップページ>
プラズマシミュレータに採用されている富士通製品に関するウェブページ
<スーパーコンピュータ PRIMEHPC FX100>
http://www.fujitsu.com/jp/products/computing/servers/supercomputer/primehpc-fx100/
<システムソフトウェア FUJITSU Software Technical Computing Suite>
http://www.fujitsu.com/jp/products/computing/servers/supercomputer/primehpc-fx100/
本件に関するお問い合わせ先
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所
管理部 総務企画課 対外協力係