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プレスリリース
核融合科学研究所と多治見工業高等学校の連携・協力に関する協定書の締結について

 自然科学研究機構 核融合科学研究所(岐阜県土岐市、所長・竹入 康彦)は、中華人民共和国の西南交通大学(四川省成都市)と、同国におけるヘリカル型核融合プラズマ研究を共同して推進するため、国際学術交流協定を締結しました。核融合科学研究所の国際学術交流協定としては、法人化後21機関目にあたり、これにより、国際交流締結機関は27機関となりました。

 核融合科学研究所と西南交通大学は、新しい概念に基づくヘリカル型装置の設計・建設などを共同プロジェクトとして実施するとともに、今後は両機関間における研究者及び学生の活発な学術交流の発展など、更なる連携の強化を図ります。

 調印式は7月3日に西南交通大学にて執り行われ、核融合科学研究所から竹入康彦所長らが出席しました。西南交通大学からは、張文桂(チャン・ウェングィ)副学長(研究担当)らが出席し、協定書に竹入所長と張副学長が署名しました。
調印式には、中国における核融合研究を先導する2つの研究所から万宝年(ワン・バオニャン)中国科学院プラズマ物理研究所長、段旭如(ダン・シュリュ)西南物理研究院副所長も列席しました。

【協定締結の経緯】

 核融合科学研究所は、大型ヘリカル装置(LHD)※1を用いて、将来の核融合炉を目指した高温プラズマ実験を行い、これまでも世界のヘリカル型核融合研究をリードしてきました。核融合発電の実現には、1億度以上にもなる高温のプラズマを、長時間維持することが必要ですが、LHDは、1億度を超えるプラズマを生成することにも、1時間近くにわたってプラズマを維持する長時間運転にも成功しています。
 一方、西南交通大学は、1896年に設立され、約2,500人の研究者、45,000人を超える学生を有する大規模な大学です。同大学は、近年のエネルギー開発要請の高まりを受けて、核融合研究に着目し、新たに中国で最初のヘリカル研究をスタートしようとしています。このため、同大学は、ヘリカル型核融合研究の最先端研究機関である核融合科学研究所へ協力を依頼し、今回の協定締結に至りました。

【協定締結の目的】

 核融合科学研究所と西南交通大学は、今後、中国の核融合研究コミュニティの強力なサポートを得つつ、CFQS(Chinese First Quasi-axisymmetric Stellarator)と名付けられたヘリカル型装置※2の設計・建設、プラズマの加熱・計測技術開発、プラズマ実験の実施において、共同プロジェクトを立ち上げ、緊密に連携しながらプロジェクトを遂行していきます。

 また、協定締結により、核融合科学研究所と西南交通大学の研究者及び学生の活発な学術交流の発展など、更なる協力活動の推進を図ります。

【協定締結の意義】

 今回の協定締結によって、核融合科学研究所と西南交通大学では、以下のような成果が見込まれます。

中国における核融合研究の更なる進展が期待されます。中国で最初のヘリカル型プラズマ実験を開始することにより、今後核融合研究で重要な定常運転に必要な学術研究の発展を期待することができます。
新しく共同で設計・建設する、これまでに無い新しい概念に基づくヘリカル型装置を用いて、プラズマ実験研究を実施することにより、核融合科学研究所の主力装置であるLHDによる実験研究を補完することができます。
今回の共同プロジェクトにより、核融合科学研究所はヘリカル型核融合研究のアジアへの展開を図ることができます。今後、欧米を含めた、ヘリカル型核融合研究の国際ネットワーク形成に、日本から強力なリーダーシップを発揮することができます。

【解説】

※1 大型ヘリカル装置(LHD)
世界最大規模の超伝導ヘリカル型プラズマ実験装置であり、ヘリカル(らせん)形状のコイルで強力な磁場を作り、その中に1億度を超える高温プラズマを閉じ込めます。核融合研究の重要な課題である、定常運転の性能に優れていることが特徴であり、世界の核融合研究の中で特に注目を集めている実験装置です。

 

※2 CFQS

 中国で建設予定の、ヘリカル型装置の新しい磁場構造の概念に基づく小型装置です。プラズマを閉じ込める磁場の形を、高度な数学的手法を駆使して設計しており、写真に示す濃青色の複雑な磁場コイルの形状が、この装置の特徴の一つとなっています。核融合科学研究所で設計研究を行ったCHS-qa装置は同じ仲間の装置であり、今後のCFQS装置設計において、この研究の多くの成果が取り入れられる計画です。

【本件のお問い合せ先】

自然科学研究機構 核融合科学研究所 研究力強化戦略室
  特任教授  岡村 昇一
(TEL:0572-58-2539  E-mail:okamura.shoichi@lhd.nifs.ac.jp