
クラーケン・シーサペント・海魔:16世紀から始まる大航海時代、海の魔物と恐れられていた謎の生き物、巨大イカ、それがダイオウイカ。ダイオウイカは、無脊椎動物の中では最大級の生き物で動物ギネスブックによると、1966年大西洋バハマ沖で捕獲された全長(鰭の後端から触腕の先端)14.3 mの記録がある。
今までに、欧米の研究者が生きているダイオウイカを、その生息している深海で特殊カメラや有人潜水艇をもちいて撮影することを試みるが、すべて、失敗に終わる。
そこで、我々は2002年から小笠原父島沖で小型デジタルカメラ・ロガーをもちいて深海性大型イカ類の調査を始めた。そして2004年9月、深度900mの深海で世界初となる、ダイオウイカの静止画を撮ることに成功した。さらに2006年には、深度650m付近からダイオウイカを釣り上げ、その動き回る姿をビデオカメラに記録しメディアを通じて世界中に発信し、世界を驚愕させる。
それらの成果を受けて、NHKグループはダイオウイカが深海で泳ぐ姿を実際に撮影しようとする大規模プロジェクトを計画した。私も研究者 として参画することになった。
そして、2012年夏、40日間におよぶ小笠原ダイオウイカ撮影大プロジェクトが敢行された。その成果は、ダイオウイカと人類の初の遭遇という快挙となり、2013年1月13日NHKスペシャル「世界初撮影!深海の超巨大イカ」で放映された。そのプロジェクトの 実態を、実際に参加した研究者の立場から紹介する。
プロフィール
1951年東京生まれ。北海道大学水産学部卒業。北海道大学大学院水産学研究科博士課程単位取得の後、退学。1982年、水産学博士。1982-83年、米国オレゴン州立大学海洋学部研究助手。1984年より国立科学博物館動物研究部の研究官、主任研究官、室長、研究グループ長を経て2011年より現職。専門は、頭足類の分類・生物学、高次捕食者の食性研究。第28次日本南極地域観測隊(海洋生物担当)に参加。
著書
日本近海産貝類図鑑:頭足類(東海大学出版会:2000)、イカーその生物から消費まで:イカ類の生理・生態(成山堂書店:2002)、日本列島の自然史:南のタコ・北のイカ(国立科学博物館叢書:2006)、海に生きるものたちの掟(サイエンス・アイ新書:2009)、新鮮イカ学:第10章-巨大イカ暗黒に舞う(東海大学出版会:2010)など。新種頭足類17種の記載論文のほか、頭足類の分類・生態に関する学術論文、報告書など多数。
特記
2004年、小笠原沖の深海でダイオウイカの生きている姿を世界で初めて撮影することに成功し、世界中の注目を集める。この事件は2005年のNational Geographic News Stories Top 10の第一位に選ばれた。また、2006年には同じ小笠原沖で実際に生きたダイオウイカを釣り上げ、その動き回る衝撃的な映像をニュースメディアに公表し、世界を驚かせ続ける。2007年、ニューズウイークの「世界が尊敬する100人の日本人」に選ばれる。2008年、ニュージーランド国立博物館にて南極海で捕獲された巨大イカ・コロッサル・スクイッドの標本作製に協力し、その様子はDiscovery Channel を通じて世界中に広く発信された。2012年7月、NHK・Discovery Channelと国立科学博物館の共同プロジェクトでダイオウイカの生態映像の撮影に成功し、2013年1月にはNHKスペシャル番組・ディスカバリーチャンネル自然番組として発信され、世界中を驚愕させる。