講師:木股 文昭
東濃地震科学研究所 副主席主任研究員
私は、御嶽山を家の前の山や中学校の校庭から眺めて育ち、学校では「休火山」と学んだ。東海地方の地震や火山を研究する部署に就き、昭和に噴火記録が残る焼岳には登っていた。1979年、休火山であるはずの御嶽山が突然噴火した。まさに眠りから叩き起こされた。
調査研究が進むと、御嶽山は歴然とした活火山であることが瞭然とした。1万年前に火砕流や溶岩流出などの噴火記録が残り、その後も1991年と2007年にごく小規模な噴火を2回繰り返していた。噴火に際し、91年には地震活動、微動が、07年には加えて地殻変動や超低周波地震などが先行して観測された 。
私たちも噴火プロセスがおぼろげながらもみえてきて、観測体制を整備すれば、噴火予知研究として、活火山御嶽山と共存できると期待した。ところが、2014年の噴火で60余人の命を失ってしまった。
御嶽山の調査研究を通して、探ってきた活火山の噴火メカニズムの解明と噴火予知研究の現状を紹介する。