課題番号1

藤堂泰(核融合科学研究所)

核燃焼プラズマの⾃⼰組織化を予測・活⽤する

核燃焼プラズマにおける⾼エネルギーアルファ粒⼦の閉じ込めと活⽤

カテゴリー: A1, B2, B4, B5, B6, B13

⽬指すもの(output)︓

- ITER や原型炉での⾼エネルギー粒⼦駆動不安定性とアルファ粒⼦輸送の予測・制御

波及(outcome)︓

- ⾼エネルギー粒⼦駆動不安定性による帯状流の形成と微視的乱流輸送の制御

- アルファチャネリング

- 運動論的電磁流体⼒学の確⽴

課題1イメージ

ITER プラズマにおけるアルフベン固有モード

国際協⼒により建設中の ITER において、⼈類ははじめて核燃焼プラズマの実現に挑戦する。これまでの核融合プラズマ実験では外部からのプラズマ加熱によってエネルギーを⼊⼒していたが、核燃焼プラズマでは内部での核融合反応が主要なエネルギー源となる。その性能予測と制御においては、プラズマの⾃発的な構造形成(⾃⼰組織化)を考慮することがますます重要になるであろう。核融合反応から発⽣し、核融合エネルギーをプラズマに⼊⼒する(=加熱する)役割を担うのは⾼エネルギーアルファ粒⼦であり、その輸送と閉じ込めは重要な研究課題である。

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核燃焼プラズマでは、核融合反応から発⽣する⾼エネルギーアルファ粒⼦が燃料プラズマを加熱することによって、核融合反応に必要な⾼温状態が⾃律的に維持される。このため⾼エネルギーアルファ粒⼦の良好な閉じ込めが核燃焼プラズマの実現には必須の条件である。しかし、⾼エネルギーアルファ粒⼦が不安定化させるアルフベン固有モードなどの電磁流体⼒学振動との相互作⽤によって、⾼エネルギーアルファ粒⼦の輸送と損失が引き起こされる可能性があるので、その予測と制御は重要な研究課題である[1]。また、⾼エネルギー粒⼦駆動不安定性は、⾮線形効果によって形成される帯状流を媒介として微視的乱流輸送に影響を与え、さらにはランダウ減衰によって燃料イオンを加熱する(=アルファチャネリング)。このような⾼エネルギーアルファ粒⼦に起因した⾃⼰組織化の性質を理解することで、核燃焼プラズマの性能を向上できると期待される。また、電磁流体⼒学は無衝突プラズマに対して未完成の学問体系であるが、プラズマ粒⼦と電磁流体⼒学振動の運動論的な相互作⽤の研究は無衝突プラズマを対象とした運動論的電磁流体⼒学の確⽴につながるであろう。

[1] ⼩特集「アルヴェン固有モード研究の最新事情」, 藤堂泰 他, プラズマ・核融合学会誌 Vol. 83, p. 865(2007)