課題番号11

松岡清吉(核融合科学研究所)、鈴⽊康浩(核融合科学研究所)

磁場が描く層・分岐・カオスの起源は︖

閉じ込め磁場構造の⼤域的幾何学

カテゴリー: A2, A3, B1, B2, B7

⽬指すもの(output)︓

- 磁場閉じ込め概念の基礎となる磁場の⼤域的幾何構造の記述

波及(outcome)︓

- ⾮保存的ハミルトン⼒学系に対する数理解析的⼿法の構築

課題11イメージ

多様な構造を描く磁⼒線のポアンカレ断⾯図

トーラス形状を持つ磁場閉じ込めプラズマでは、トーラスに沿って捻れた磁⼒線が描く⼊れ⼦状の閉曲⾯(磁気⾯)でプラズマを閉じ込める。磁場がある⽅向に幾何学的対称性を持ち2 次元的に取り扱える場合、磁気⾯の存在は数学的に保証されている。しかし、⼀般の3 次元磁場ではそのような保証はなく、むしろ島構造やカオスといった磁気⾯の破れとも⾔える複雑かつ多様な構造を作ることが可能になる。⽬に⾒えない複雑に捻れた磁場を幾何学として捉え、それが取りうる構造の起源を解き明かすこと、これはトーラス磁場によるプラズマ閉じ込めの概念の成⽴に関わる重要課題である。

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トーラス形状を持つ磁場閉じ込め核融合の基本的なコンセプトは、⼊れ⼦状の構造をもつ磁気⾯に超⾼温プラズマを閉じ込めることである。トカマクのように幾何学的対称性を持ち2次元として磁場を定義できる場合、磁場のハミルトニアンに保存量が存在し、磁気⾯の存在が常に保証される。しかし、ステラレータ等の3 次元装置では事情は⼤きく異なる。まず、幾何学的対称性がないために厳密な磁気⾯の存在は保証されず、磁⼒線は磁気⾯以外にも磁気島やカオスなど多様な軌道を描くことが可能になる。さらに、3 次元磁場のハミルトニアンはふつう数値計算によって離散的にしか与えられない。⼀⽅で、核融合の観点からは、磁場の⼤域的幾何構造は中に閉じ込められたプラズマの性質に直結するため、良好な磁気⾯を持つよう装置設計を考えたい。したがって、3 次元磁場のハミルトニアンが良好な磁気⾯=保存量をもつ、すなわち可積分系であるように構成するための指標を⾒出すことが必要である。 そのためには、⾮保存的・離散的な磁場のハミルトニアンを⼒学系の観点から解析し、磁場が取りうる⼤域的な幾何構造を知る必要がある。与えられた磁場が磁気⾯を形成するのか、あるいは島構造やカオスを描くのか、さらにはそれらの構造がどのようなパラメータ(磁場コイル形状、電流分布、etc…)依存性をもつのかを明らかにすることは、磁場閉じ込め概念の成⽴性のみならず、⾮保存的ハミルトン⼒学系の数理解析という観点からも興味深い問題といえる。

[1] 鈴⽊康浩「解説 Wendelstein 7-X の設計思想と磁場配位特性」, J. Plasma Fusion Res. Vol.93, 309 (2017).

[2] 鈴⽊康浩 「⼩特集 プラズマが作る磁場トポロジー︓磁気島とプラズモイド 2. 磁気島の発⽣と消滅」, J.Plasma Fusion Res. Vol.94, 396 (2018).

[3] 古川勝 「解説 流れや磁気島のあるMHD 平衡の疑似アニーリング」, J. Plasma Fusion Res. Vol.94, 341(2018).