課題番号12

浅井朋彦(⽇本⼤学)

磁場とプラズマの圧⼒がつり合う磁場配位とは︖

極限的⾼ベータ磁場閉じ込め⽅式︓FRC

カテゴリー: A2, A3, B1, B2, B3, B5

⽬指すもの(output)︓

- 極限的⾼ベータ(β>1)、超⾼速(∼1000km/s)プラズマ流

- 極限的に⾼効率な磁場閉じ込めの実現

- 先進燃料による核融合実現の可能性

波及(outcome)︓

- 天体プラズマ現象の再現

課題12イメージ

FRC の概念図

⼩型で効率が⾼い核融合炉⼼や中性⼦排出のない先進燃料核融合の実現には,⾼ベータ化が必須である。これを極限まで突き詰めると,プラズマ電流と閉じ込め磁場が完全に直交し,トーラス中⼼に⽳が開いていない磁場反転配位(Field-Reversed Configuration: FRC)となる。FRC の平衡は⼀流体MHD 近似においてGrad-Shafranov ⽅程式の解としても得られるが,その特異な磁場配位のため,局所的なβ値はその体積の⼤部分で1を超え,したがって粒⼦は磁化していない。アルヴェン速度に達する平衡フローを持ち,1桁以上の体積変化を伴う超⾳速衝突を経ても⾃⼰組織化的にFRC が再形成されるなど,多くの点で他の磁場配位と異なる性質を⽰し,同時にその緩和のメカニズムなどには未解明な点も多い。近年,TAE 社の⼤型FRC 実験において,⾼温(〜3keV)FRC の定常運転が実現し,超⾼ベータ核融合炉⼼の可能性が⾒えてきた。

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トロイダル電流Jt とそれがつくるポロイダル磁場Bp のみで,ポロイダル断⾯内で磁束が反転し磁場強度がゼロとなる磁気中性点(O-point)を持つ配位を形成すると,Jt × Bp が∇p と完全にバランスし,体積平均ベータ <β>が1に近く,トカマクなどで閉じ込め効率の指標とされるトロイダルベータβt が∞となる極限的な配位が形成される。これが,磁場反転配位(Field-Reversed Configuration: FRC)である。FRC 中のイオンはプラズマ表⾯のみで磁化し,体積の⼤部分で局所的なβ値が1を超える。このときイオンの平均ラーモア半径はプラズマの特性⻑と同程度となり,「純運動論的」とも⾔える状態となる。閉じ込めについても異常輸送特性が消失するなど,他の閉じ込め⽅式とは異なる観測結果が多数報告されている。また,プラズマの閉じ込め領域は単連結となり,磁気圧で秒速数百km に⽐較的容易に加速できることから,トカマク中⼼部への粒⼦供給法としても研究されており,近年では⼤容積の⾼ベータ(β > 1)中に無衝突衝撃波を形成する実験室天⽂学的アプローチも⾏われている。超⾳速衝突実験では,磁気ヘリシティや⼀般化ヘリシティの保存という枠組みに収まらない「FRC の⾃⼰組織化的⽣成」を⽰す結果も報告されており,プラズマ・核融合分野を超えた学術的興味関⼼を引いている。歴史的にはパルス実験が主流であったが,近年,⽶TAE 社で⼤型装置が建設され,NBI により導⼊された⾼エネルギーイオンによる安定化効果により閉じ込め性能を向上したABD(Advanced Beam-Driven)FRC による⾼効率核融合炉⼼開発が進められている。

[1] 浅井朋彦他,「極限的高ベータ配位:FRC の閉じ込め・安定性をどう理解するか?」プラズマ・核融合学会誌 96,pp.165 (2020).