課題番号13

井通暁(東京⼤学)、⾼橋俊樹(群⾺⼤学)

磁化プラズマの巨視的構造形成の謎に迫る

ヘリシティ保存に基づく緩和過程

カテゴリー: A2, A3, B1, B2, B5, B12

⽬指すもの(output)︓

- 磁場閉じ込め配位の⾃発的な形成

波及(outcome)︓

- 天体・⼤気・海洋などの構造形成・⾃⼰組織化

課題13イメージ

同軸ヘリシティ⼊射における緩和過程

(画像提供︓神吉隆司・⽔⼝直紀)

⾮圧縮の完全流体ではヘリシティ(流速と渦度の内積の空間積分)が保存量となり、輸送や⼤規模構造形成を引き起こしている。同様に理想MHD プラズマは、磁気ヘリシティ(磁場とベクトルポテンシャルの内積の空間積分)が保存量となり、磁気エネルギー最⼩の状態へと遷移(緩和)するが、変分問題を解いて得られる最終状態は圧⼒ゼロの静⽌平衡に限定されてしまう。⾼圧⼒核融合プラズマの緩和状態を再現するために、電⼦とイオン流体それぞれの⼀般化ヘリシティ(⼀般化運動量と⼀般化渦度の内積の空間積分)が保存される⼆流体モデルが導⼊されている。

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磁気エネルギーはMHD 不安定性によって散逸するが、磁気ヘリシティはMHD 不安定性の時間スケールで保存されると仮定すると、孤⽴したMHD プラズマ中の磁場分布は1つのラグランジュ未定乗数を⽤いた変分問題として求めることができる。境界条件に応じてプラズマの巨視的な空間構造が決定され、MHD プラズマは最終的には磁気ヘリシティ保存下での最⼩磁気エネルギー状態(緩和状態)に到達する。また、プラズマ領域につながる磁⼒線に沿って外部から電位差を与えることにより、プラズマに磁気ヘリシティを注⼊し、巨視的構造の維持に利⽤することができる。ただし、理想MHD における緩和状態には流れが存在せず、磁場と電流が平⾏となるforce-free配位に限定されてしまうため、⾼圧⼒の核融合炉⼼プラズマ中に⾃発的に形成される構造を適切に表現することはできない。そこで、電⼦とイオンそれぞれの⼀般化ヘリシティを保存量とするという⼆流体緩和の考え⽅を導⼊することによって、圧⼒勾配や流れを有する緩和状態を表現することができる。⼆流体緩和は、MHD や理想流体の緩和を含んだ⾃由度の⼤きな過程であり、多様な緩和状態を導くことができるが、有意な巨視的構造へと向かう緩和過程を導出するためには、散逸機構や最⼩化すべき物理量などをプラズマの性質に基づいて適切に設定する必要がある。

[1] ⾼橋俊樹ほか、プラズマ・核融合学会誌、88、pp.409-417 (2012).【解説】