課題番号14

仲⽥資季(核融合科学研究所)

プラズマに潜む隠れた対称性をデザインする

プラズマの3次元磁場最適化と様々な準対称構造

カテゴリー: A1, A2, B1, B3, B4, B5

⽬指すもの(output)︓

- 磁場構造を⾃在にデザインする⽅法論の確⽴

- ⾼閉じ込めと安定性が両⽴する磁場構造

波及(outcome)︓

- 核融合炉の最適化・⾼性能化

- 最適化数理で新たな物理特性を探索する⽅法論の展開

課題14イメージ

プラズマを閉じ込める⾮軸対称トーラス磁場形状の多様性(中⼼は装置名を表す)

(Office of Science of the U.S. Department of Energy.Opportunities in the Fusion Energy Sciences Program より)

トーラス状の磁場で⾼温プラズマを閉じ込める際、磁場の空間的な対称性はどのような役割を持つだろうか︖トカマク系と呼ばれるプラズマは磁場とプラズマ形状の軸対称性が⼀致し、閉じ込めに有利な保存量が存在する。⼀⽅、3次元的に捩れたヘリカル系でも、⾮軸対称なプラズマ形状の中で、磁場構造には幾つかの対称性を与えることができる。準対称性と呼ばれるこの性質は、プラズマの安定性や輸送現象と密接に関連している。膨⼤な⾃由度を持つ磁場構造から隠れた対称性をいかに引き出してプラズマの特質を最⼤化するか︖この問いに迫る研究が展開されている。

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トカマクプラズマは、炉⼼内部に誘導される電流によって磁⼒線に捩れを与えるため、磁場構造は軸対称性を保持している。近年、Wendelstein 7-X やHSX, Heliotron J などに代表される、3次元磁場配位の多様性に⽴脚したヘリカルプラズマの磁場配位最適化研究が国内外を問わず加速的に展開されている。ヘリカルプラズマは⼀般に外部コイルの3次元変形によって、プラズマ電流を外部から誘導することなく磁⼒線に回転変換を与える。そのため、軸対称系のトカマクプラズマとは異なり、3次元実空間から⾒たプラズマ形状には幾何学的対称性が失われる場合が多い。しかしながら、近代におけるヘリカルプラズマの考え⽅の本質は、⾮対称な幾何形状の中にあってもなお内部の磁場構造あるいは粒⼦軌道に近似的な対称性(準対称性)を与えることが可能となる点にある。典型的には準軸対称性、準ヘリカル対称性、準等磁場性が知られている。⼀⾒、プラズマの中に隠れた対称性とも⾔える磁場構造の準対称性は、その多様な構造に応じて粒⼦軌道特性や平衡安定性、輸送特性などに対して様々な影響を与えることから、単なる性能の最適化に留まらず、ある特質が最⼤化された新たなプラズマの創出も期待される。準対称性の概念や磁場配位最適化はヘリカルプラズマで精⼒的に培われた研究であるが、それらに付随する⽅法論はトカマクプラズマにおける電流分布や周辺領域での3次元摂動磁場の制御・最適化にも有効である。多様な3次元磁場やプラズマの内部分布の構造を適当な基底で展開して構成される多次元空間として捉えるとき、多次元極値問題やランドスケープ解析といった閉じ込めプラズマの新たな可能性を開拓する研究展開も期待される。

[1] M. Yokoyama, ”Quasi-Symmetry Concepts in Helical Systems“, J. Plasma Fusion Res. Vol.78, 205(2002).