課題番号16

辻井直⼈(東京⼤学)

波でプラズマを⾃在に操れるか︖

⾼周波による炉⼼プラズマ加熱・電流駆動

カテゴリー: A1, B2, B4, B11

⽬指すもの(output)︓

- ⾼周波による加熱・電流駆動効率の向上

- 核融合炉に適合する⾼周波システムの開発

波及(outcome)︓

- 分布や不安定性の制御による炉⼼プラズマ性能向上

課題16イメージ

環状プラズマ中のICRF 波動電場分布

中⼼部では1 億度に達する核融合プラズマの内部状態は強い乱流により⾃律的に形成されるが、外部磁場だけで、これを⾃在に制御することは難しい。⾼周波による加熱・電流駆動では、⼊射した波が共鳴条件を満たす荷電粒⼦のみと選択的に相互作⽤する。磁場構造に対して波の周波数や波⻑、偏光を上⼿く選ぶことで、電⼦とイオンの選択的加熱、電流駆動、流れの駆動や⾼速イオン⽣成が可能である。実⽤上の技術的課題はあるものの、磁場閉じ込めプラズマのアクチュエータとして、⾼周波は多彩な役割を果たしていくことが期待される。

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核融合プラズマ中の⾼周波(RF)は電⼦サイクロトロン周波数帯(ECRF)からイオンサイクロトロン周波数帯(ICRF)までの波に対応している。波・粒⼦相互作⽤の計算に必要な理論的定式化は、1990 年代頃までにほぼ完了しており、近年の計算技術の急速な進歩によって、現在では環状プラズマのグローバルかつ⾃⼰無撞着な波・粒⼦のシミュレーションが可能となっている。新しく設計するRF システムの性能を定量的に予測することができるという意味で、核融合プラズマにおける波動物理の理解はほぼ完成の域に達していると⾔えるであろう。応⽤は、電⼦及びイオンサイクロトロン共鳴による加熱が基本であるが、ECRF とICRF の間にある低域混成周波数帯(LHRF)の波はランダウ共鳴による⾼い電流駆動効率を持つ。より⾼度な制御としては、温度分布制御による内部輸送障壁の形成や、局所電流駆動による巨視的不安定性の抑制が実証されている。主な課題は核融合炉に適合するRF システムの開発である。ECRF はプラズマから離れた位置から⼊射できるため核融合炉のアクチュエータとして最有⼒であるが、プラズマの性能が上がる⾼磁場になるほど⾼電⼒・定常運転は難しくなる。ICRF を含むLHRF 以下の波は⾼電⼒・定常電源の技術が既に確⽴されており安価であるという利点がある。⼀⽅真空中を伝搬しない波をプラズマの近傍で励起する必要があるため、プラズマ・アンテナ相互作⽤の最⼩化は解決の難しい⼤きな課題である。しかし、LHRF は⾮誘導電流駆動としては最も効率が良く、また、D-T プラズマに少量の不純物を導⼊すればICRF だけで電⼦とイオンの選択的加熱や⾼速粒⼦⽣成といった多彩な制御が可能である。近年、⾼温超伝導コイルを⽤いたLHRF で駆動される強磁場核融合炉コンセプトも提唱されており、RF を主要なアクチュエータとする画期的な核融合炉設計はまだまだ存在するであろう。

[1] 渡利徹夫ほか、⼩特集「⾼周波による核融合プラズマ制御の進展」JSPF 81, 149 (2005)