課題番号2

釼持尚輝(核融合科学研究所)

⾃発形成する断熱層でより熱いプラズマを閉じ込める

輸送障壁を有する⾼性能プラズマの制御

カテゴリー︓A1, A2, B3, B5

⽬指すもの(output)︓

- 核融合炉⼼プラズマの⾼性能化

- 輸送障壁を有するプラズマの分布制御

- 構造形成の理解

- 制御⼿法の確⽴

波及(outcome)︓

- 乱流の⾮線形効果

- マルチスケールの構造形成

- ⾃⼰組織化形成の理解の進展

課題2イメージ

プラズマ内部と境界部に形成される断熱層(輸送障壁)

核融合発電炉では1億度を超える⾼温プラズマを⻑時間安定に維持する必要がある。これにはプラズマ内部に温度の⾼い領域と低い領域を仕切る輸送障壁と呼ばれる断熱層の形成が有効になる。プラズマ中の熱エネルギーは乱流により外に向かって移動するが、速い流れを作ることで乱れていた流れの⽅向を整えることができる。これにより熱エネルギーが移動しにくくなりプラズマ内部に熱エネルギーを閉じ込めることができる。核融合炉実現には、「輸送障壁はどのように形成されるのか︖」という問いを明らかにし、輸送障壁の位置を制御することが重要である。

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トーラス系プラズマでは輸送障壁の形成により、輸送障壁を伴わない場合(L モードプラズマ)に⽐べて、2-4 倍の⾼い閉じ込め性能が得られている。輸送障壁には⼤きく分けて⼆種類あり、ひとつはプラズマの外側(表⾯近く)にできる周辺輸送障壁(Edge Transport Barrier, ETB)、もうひとつはプラズマの内部にできる内部輸送障壁(Internal Transport Barrier, ITB)である。周辺輸送障壁をもつプラズマはH モードプラズマと呼ばれ、核融合炉の運転シナリオに位置づけられる。プラズマ中に内部輸送障壁を形成することで、輸送障壁近傍の圧⼒勾配により⾃発電流を流すことができる。これは特に、閉じ込め磁場配位を形成するためにプラズマ電流を流し続ける必要があるトカマクでは重要となる。更に、輸送障壁の形成や制御には、乱流の抑制が重要であるが、乱流を抑制するには⼤きく分けてExB シアによるものと、ゾーナルフローによる抑制機構が考えられている。このうち、ExB の制御にはNBI を⽤いた運動量⼊⼒が効果的であり、JT-60U などにおいてその効果が確認されている。⼀⽅で、輸送障壁の形成位置に対する制御ノブとして、有理⾯・磁気島や磁気シアが考えられる。これには、中性粒⼦ビームや電⼦サイクロトロン波を⽤いた電流駆動による電流分布制御が有効である。これに加えて、プラズマの乱流や圧⼒など各種物理量のリアルタイムな計測・解析(課題番号44 参照)を組み合わせることで、核融合プラズマ制御の実現が期待される。

[1] 森 雅博,他,“小特集トーラスプラズマにおける輸送障壁”, プラズマ核融合誌,74 (1998) 967.

[2] K. Ida and T. Fujita, “Internal transport barrier in tokamak and helical plasmas”, Plasma Phys. Control. Fusion, 60 (2018) 033001.