課題番号23

横⼭雅之(核融合科学研究所)

核融合研究から芽吹く新たなインフォマティクス

フュージョン-ドリブンインフォマティクス

カテゴリー: A1, A2, A3, B13

⽬指すもの(output)︓

- データサイエンスとの協働による核融合研究の加速

波及(outcome)︓

- 多階層複雑系研究の新展開

- データサイエンス分野への実データ実践の多様な機会の提供

課題23イメージ

データサイエンス⼿法の適⽤による核融合プラズマ研究の例【図の提供︓(各段左から右へ)森下侑哉(京⼤)、⼤舘暁(核融合研)、佐々⽊真(⽇⼤)、稲垣滋(九⼤)】

核融合プラズマは、多階層複雑系の象徴的な研究対象である。それ故に、「要素還元、演繹」的なアプローチが取られることが多く、それら各要素での理解や知⾒に基づく統合が⾏われている。⼀⽅、近年、「〇〇インフォマティクス」とも称される「帰納的な推定・記述」のデータ駆動的アプローチが、社会構造変⾰、さらには研究⼿法の⾰新をもたらしている。核融合研究は、世の中に⾒られる多様なデータが凝縮しており、データサイエンス分野の研究者にとっても「実データ実践の場」として新たなインフォマティクスを芽吹かせる魅⼒的な舞台である。

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核融合プラズマは多様な時空間スケールを有する物理過程が複雑に連関する媒質である。これまで、「階層化された演繹的な」研究が⼤きく進展し、それらの階層統合へと進展している。⼀⽅、社会に⽬を向ければ、データサイエンスの進展や波及による様々な変⾰には⽬をみはるものがある。そのデータサイエンス分野との協働によって、多種・多様・⼤規模なデータを基盤とした「帰納的」視座を導⼊することで、核融合プラズマ研究を加速できる可能性がある。例えば、階層化を伴わない全体挙動のモデリング(データ同化)、直接測ることができないプラズマ内部構造の推定(トモグラフィー)、ディスラプション回避や乱流構造抽出(⾼次相関時系列データの変化点検出や予測)、磁場の幾何構造探索(数理計画や⾼次元データ可視化など)、衝突輻射モデル構築(マルコフ連鎖モンテカルロ法の活⽤)など、様々な取り組みがなされ始めている[1,2]。演繹と帰納の協奏を図ることで、多階層複雑系研究の新展開を学術界に提⽰できる可能性を秘めている。また、⼊⼒と応答の関係の帰納的記述を通じて、物理研究から制御⼯学研究への展開をもたらしうる。

⼀⽅、核融合研究は、データサイエンス分野の研究者にとっても、「実データ実践の場」として魅⼒ある舞台である。例えば、機械学習で得られる知⾒の解釈可能性研究はプラズマの物理機構解明研究と相補的に取り組む格好の研究題材である。このように、データサイエンス分野との協働は、核融合研究、及び、データサイエンス分野双⽅の新展開と研究加速をもたらしうる。

[1] 浜⼝智志ほか、⼩特集「プラズマ・インフォマティクス ―データ駆動科学のプラズマへの応⽤」、プラズマ・核融合学会誌 95(2019)535-561.

[2] 今寺賢志ほか、⼩特集「磁場閉じ込め核融合プラズマにおけるデータ駆動的アプローチによる物理モデリング」、プラズマ・核融合学会誌 97 (2021) 64-95.