課題番号25

⽥中宏彦(名古屋⼤学)

磁場を乱して、壁を守る

外部摂動磁場による周辺プラズマ制御

カテゴリー: A1, A2, B1, B3, B7, B13

⽬指すもの(output)︓

- ELM 緩和・抑制による過渡熱負荷低減

- 周辺プラズマ変形や放射ダイバータ維持による定常熱負荷低減

波及(outcome)︓

- 3次元磁場効果・物理の理解

課題25イメージ

磁場を適度に乱すための摂動磁場

1億度のプラズマを点⽕する核融合装置の中では、磁場のカゴによりプラズマ周辺部に急勾配をもつ温度・密度分布が形成される。この急勾配は核融合反応を起こす上では好ましいものであるが、同時に、カゴの外側へプラズマを間⽋的・周期的に放出する現象を引き起こすことがわかっており、プラズマが運ぶ⾼熱流束により炉壁の損傷に繋がることが懸念される。そこで、プラズマの外側からあえて磁場を乱すことで、カゴを適度に壊して勾配を緩やかにし、プラズマ放出現象から炉壁を守る研究が進められている。

----------------------

環状磁場閉じ込め装置では、磁場のカゴを使い⾼温の炉⼼プラズマを閉じ込める。特に⾼性能なプラズマを⽣成する際、カゴの境界付近には、⾼いプラズマ圧⼒勾配に起因する不安定性である『周辺局在化モード(ELM)』が発⽣し、⾼熱流のプラズマがカゴの外側へと間⽋的・周期的に放出される。放出されたプラズマは、磁⼒線に沿って耐熱性の材料(ダイバータ板)まで運ばれるが、このときダイバータ板が損傷することが強く懸念されている。カゴの閉じ込めが良いほど、プラズマの放出間隔は⻑くなり、これは⼀度に放出される熱量が膨⼤となることを意味する。そこで、プラズマ外部に3次元的に設置されたコイルに電流を流し、磁場に摂動を与えてカゴを少しだけ壊すことで、放出間隔を短くする⽅法が提案・実証されている。さらにこの摂動磁場は、カゴの外側の磁⼒線構造をも変形させることから、ときにはダイバータ板に触れるプラズマの⾯積を増やし、あるいは光の形態でプラズマを冷やす領域(放射領域)を空間中に固定して、定常的なダイバータ熱負荷分布にも影響を及ぼす。ここで重要な点は、磁場の乱し⽅が適度でないと、炉⼼プラズマの性能まで劣化してしまうことである。磁場のカゴを適度に壊して炉壁を守れるか、実験ならびに数値シミュレーションを駆使した研究が鋭意進められている。

[1] 武智学、⼩特集「トカマクにおける三次元MHD 研究の現状と他の閉じ込め配位からの寄与/4. 巨視的不安定性の制御における外部摂動磁場の効果」、プラズマ・核融合学会誌 88 (2012) 162-167.