課題番号26

江⾓直道(筑波⼤学)

気体を使って⾼温プラズマを⼿なずけろ︕

プラズマ-気体相互作⽤によるダイバータプラズマの熱粒⼦束制御,⾮接触プラズマの⽣成・制御

カテゴリー: A1, B3, B7, B8, B9, B12

⽬指すもの(output)︓

⾼性能炉⼼プラズマとダイバータ領域の熱粒⼦負荷の低減を両⽴するプラズマ制御⽅法の確⽴核融合炉の成⽴に必須となる⾮接触プラズマの構造形成の制御⽅法の確⽴

波及(outcome)︓

プラズマ-気体の相互作⽤、原⼦分⼦過程の理解プラズマ気相反応を利⽤した産業応⽤

課題26イメージ

磁場閉じ込め型核融合プラズマ装置において、炉⼼から流出するプラズマの熱と粒⼦の制御を⾏うダイバータ領域への熱粒⼦負荷を低減するために、プラズマと気体との相互作⽤によりダイバータ板の⼿前でプラズマを消滅させて「⾮接触プラズマ」を形成し、その空間構造や放射領域を適切に制御することが核融合炉成⽴の重要課題のひとつとなっている。⾮接触プラズマの安定制御と核融合炉⼼プラズマとの両⽴の実現には、プラズマと気体との複雑な相互作⽤の理解が求められる。

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プラズマ中の電⼦、イオンと気体原⼦・分⼦(中性粒⼦)はさまざまな反応を起こす。電⼦温度が⾼い領域では、電⼦衝突による中性粒⼦の電離、励起、分⼦の解離などを引き起こし、それに伴い電⼦はエネルギーを失い、温度は低下する。イオンと中性粒⼦の間では、弾性衝突や荷電交換反応によって、粒⼦の拡散やイオン温度の低下が⽣じる。プラズマの温度が低くなってくると、イオンと電⼦は再結合して中性粒⼦となり、プラズマは消滅し、その密度は低下する。現在建設が進められている国際熱核融合実験炉(ITER)では、ダイバータ領域への熱粒⼦負荷を低減するために、プラズマと気体との相互作⽤によりプラズマ熱流を周囲へ散逸させる部分⾮接触プラズマを利⽤したダイバータ運転モードが採⽤されている。さらに原型炉ではより制御が困難と考えられる、完全⾮接触プラズマの安定維持が求められている。その実現には、プラズマの挙動とも関連させながら、プラズマと気体との極めて複雑な反応素過程やその空間分布を総合的に理解することが求められる。プラズマと気体の混在する状況は、半導体プロセスや電気推進機などのプラズマ応⽤の場⾯とも共通する部分が多く、気相・材料界⾯における物理化学過程や種々の化合物合成、機能性薄膜⽣成など、産業応⽤分野との関わりも深い。

[1] ⼤野哲靖, 星野⼀⽣, ⼩特集「原型炉に向けてのダイバータの研究開発課題 “3. ⾮接触プラズマと熱・粒⼦処理に関するダイバータ実験研究およびモデリングの現状と研究開発課題」, プラズマ・核融合学会誌, vol. 92, No. 12, 877-885 (2016).