課題番号27

⽥中宏彦(名古屋⼤学)

プラズマと物質が触れ合うことにより起こる現象を理解・制御する

プラズマ-壁相互作⽤に関する研究

カテゴリー: A1, B7, B8, B9, B13

⽬指すもの(output)︓

- プラズマ-壁相互作⽤の⾼精度な理解と制御

- 核融合炉内の壁問題解決

波及(outcome)︓

- 新材料の創成と産業応⽤

課題27イメージ

プラズマと固体壁の相互作⽤

核融合装置には必ず壁が存在し、当然ながら、壁が健全な状態を維持できなければ炉は成⽴しない。1 億度のプラズマは磁場の⼒で宙に浮いているものの、数万度〜数⼗万度のプラズマは壁と直接接触することで、多種多様なプラズマ-壁相互作⽤を引き起こす。壁構成粒⼦のプラズマ中への混⼊や、燃料ガスの吸蔵・放出現象を介して、壁の存在は炉⼼プラズマに多⼤な影響を与える。⻑期にわたる炉の運⽤を想定する上で、その実現には、壁に関連する諸現象を正しく理解・予測し、適切に制御することが求められる。

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核融合装置には、プラズマを覆う壁が必ず存在し、プラズマと壁との間では多種多様な相互作⽤(Plasma-wall interaction (PWI)もしくはPlasma-material interaction (PMI))が発⽣する。プラズマや壁材料を構成する粒⼦種は、⽔素、ヘリウム、窒素、ネオン、アルゴン、タングステン、ベリリウム、炭素など多岐にわたり、それぞれが固相・液相・気相・プラズマ相として共存する。多数の素過程の組み合わせが、壁への熱負荷、損傷、ガス吸蔵・放出特性、表⾯構造、材料物性等を決定し、壁から⾶び出す中性ガスや⾦属粒⼦が、前⾯および炉⼼のプラズマ特性を変化させる。定常核融合発電炉の実現には、到来する膨⼤な熱・粒⼦流に対して壁の健全性を保つことは前提条件であり、⻑い時間スケールでの粒⼦循環を整えた上で、炉⼼プラズマ性能を維持しなければならない。信頼性ある炉設計を成⽴させるためには、プラズマ-壁相互作⽤を正しく理解し、⾼精度で予測するのみならず、適切に制御する必要がある。解析解の存在しないマルチスケールの複合現象に対し、⼩型〜⼤型装置を⽤いた実験や、各種計算コードを⽤いた数値シミュレーション研究が精⼒的に進められている。

[1] 坂本瑞樹 他、⼩特集「マルチスケールでのプラズマ・壁相互作⽤の理解の現状」、プラズマ・核融合学会誌84 (2008) 917-947.