課題番号28

星野⼀⽣(慶應義塾⼤学)

核融合プラズマと壁の間で数百MW の熱を散らす

核融合炉ダイバータにおける熱・粒⼦制御

カテゴリー: A1, A3, B7, B8, B9

⽬指すもの(output)︓

- 核融合プラズマ・炉設計と整合するダイバータにおける熱・粒⼦制御

波及(outcome)︓

- 核融合炉設計、プラズマ・中性粒⼦・不純物間の相互作⽤の理解

課題28イメージ

ダイバータ熱負荷と近傍の密度・放射分布

核融合炉では、数億度の炉⼼プラズマを維持しながら、壁近傍ではプラズマを1 万度程度まで低温化させ、壁の損傷を防がなければならない。そのために、炉⼼プラズマから排出される数百MW ものエネルギーのほとんどを、壁に到達する前に放射や⾮接触ダイバータによって散逸させる。⾮常にチャレンジングであると同時に、核融合炉の成⽴を左右する最重要課題の⼀つである。そのため、ダイバータプラズマ輸送、⾮接触ダイバータ、原⼦分⼦過程、不純物輸送等に加え、炉⼼プラズマ設計、⼯学設計も含め、総合的な検討が必要とされている。

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周辺・ダイバータプラズマは、炉⼼から⾼エネルギーのプラズマが排出される⼀⽅、⼯学的な境界条件である壁と接する。最終的にプラズマを受け⽌めるダイバータを⼯学的に成⽴させるためには、炉⼼からプラズマとして排出される数百MW ものエネルギーの70〜90%を周辺・ダイバータ領域で処理する必要がある。さらに、ダイバータ機器の寿命の観点からは、壁損耗の原因となる粒⼦負荷も⼗分に低減させる必要があり、ダイバータ全⾯を⾮接触ダイバータ状態にすることが好ましい。このような炉⼼プラズマとダイバータを両⽴させる運転は、核融合炉では特に困難でチャレンジングな課題となり、設計にも⼤きな影響を与える。現在のところ、希ガス不純物の放射による周辺プラズマ冷却と⾮接触ダイバータを組み合わせた熱制御を基本⽅針として検討が進められている。ダイバータ熱負荷としては、プラズマのエネルギー輸送の他に、表⾯再結合による熱負荷(プラズマが壁表⾯で再結合する際の開放される内部エネルギー)、不純物や中性粒⼦の放射パワー等による熱負荷を考慮する必要がある。これらの熱負荷を総合的に減少させるためには、⾮接触ダイバータを空間的に拡⼤し、安定的に維持する必要がある。プラズマだけでなく、原⼦分⼦過程や不純物輸送、及びそれらの相互作⽤について理解を深め、それらを積極的に利⽤した運転領域の開発が必要である。さらに、ダイバータ熱負荷低減シナリオは、当然、⾼性能な炉⼼プラズマと両⽴していなければならない。そのため、⾮接触ダイバータや不純物制御に有利な⾼密度運転、⾼不純物放射運転等、運転シナリオの実験的な研究開発も急務となっている。

[1] 上⽥良夫、他、⼩特集「原型炉に向けてのダイバータの研究開発課題-現状と展望-」、プラズマ・核融合学会誌、92 (2016) 868