課題番号29

辻井直⼈(東京⼤学)

波で核融合炉⼼プラズマを⽣成できるか︖

⾼周波によるトカマクの⾮誘導⽴ち上げ

カテゴリー: A2, B5, B11, B12

⽬指すもの(output)︓

- 中⼼ソレノイドの除去によるトカマク性能向上

波及(outcome)︓

- 炉⼼プラズマ制御の効率化

- トカマク定常運転の実現

- ⾃⼰組織化する複雑系の制御

課題29イメージ

⾼周波駆動トカマク型プラズマ中の波動電場分布

トカマク配位は、環状プラズマ中に電流を駆動することで形成される。現在は中⼼ソレノイド(CS)を⽤いる⽅法が主流であるが、これを⾼周波で置き換え、CS を除去することで、トカマクの性能を⼤幅に向上できる可能性がある。波の伝搬や、波に加速される電⼦の輸送は、プラズマの分布に強く依存するため、磁⼒線のトポロジーが⼤きく変化するトカマク配位の形成過程を、全て波により制御することは⼀⾒困難である。しかし、上⼿く条件を設定することで、波だけで⾃律的にトカマク配位が形成されることが分かっている。⾃⼰組織化する複雑な系の効果的な制御⼿法の確⽴は、RF で駆動される画期的な核融合炉の実現につながるかもしれない。

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⻑時間運転し続けなければならないトカマク型核融合炉には、⾼周波(RF)によるプラズマ電流駆動が必要と考えられているが、プラズマ⽴ち上げには中⼼ソレノイド(CS)を⽤いるという考え⽅が⼀般的である。しかし、CS の除去により装置中⼼部の空間を空けることができれば、低アスペクト化(⾼ベータ化)やトロイダル磁場の増強によりトカマク型プラズマの性能を⾶躍的に改善できる可能性がある。RF によるトカマクの⾮誘導⽴ち上げは、CS の除去が必須とされている球状トカマクのコミュニティで、⼤学等の⼩型装置を中⼼に積極的に研究されてきた。現在、電⼦サイクロトロン波または低域混成波のみによるトカマク配位の形成が可能であることが実証されている。課題は⾮誘導⽴ち上げの統⼀的かつ定量的な理解と、それによる電⼒効率の改善である。RF を⽤いる電流駆動においては、⼀般に⾼エネルギー電⼦が多く⽣成される。CS を⽤いない完全RF 駆動プラズマにおいては、この⾮熱的な電⼦分布がMHD 平衡を⽀配しているが、⽣成された平衡磁場配位は逆に波の伝搬・吸収と⾼エネルギー電⼦の輸送を決めている。この波・粒⼦・MHD の相互作⽤によって⾃律的にトカマク配位が形成されることが実験的にはわかっているが、このような分布形成を定量的に理解することが必要である。RF による駆動においては、位相空間における波と電⼦の共鳴的相互作⽤を上⼿く利⽤することで、精密な分布制御ができる可能性がある。トカマク型プラズマのRF ⽴ち上げの物理を基礎的なレベルで理解することは、RF による⾼性能な定常炉⼼プラズマの実現にも役⽴つはずである。

[1] 前川孝ほか、⼩特集「球状トカマクの実⽤炉への展望」第4 章「CS 無しの⽴ち上げ、定常維持は可能か︖」JSPF 80, 935 (2004)