課題番号3

前⼭伸也(名古屋⼤学)

微細渦が⾃発的に励起されるプラズマ乱流のマルチスケール相互作⽤

極微細な電⼦スケール乱流がプラズマ閉じ込めに与える影響

カテゴリー: A1, A2, B3, B4

⽬指すもの(output)︓

- プラズマ乱流のマルチスケール相互作⽤の解明

- 複スケールの⾃発的励起過程を持つ乱流理論の構築

波及(outcome)︓

- 乱流輸送の核燃焼プラズマに対する外挿性の検証

- 中性乱流におけるマルチスケール乱流現象への波及

- マルチスケールモデリングや簡約シミュレーションのための情報科学との連携

課題3イメージ

プラズマ中に発達するマルチスケール乱流

磁場閉じ込めプラズマは、⼤⼩様々な波・渦が複雑に相互作⽤する乱流状態にあり、乱流による輸送がプラズマ閉じ込め性能を⼤きく決定づけることが知られる。加えて、乱流揺らぎを駆動する不安定性にも、⼤きなスケールで起こる不安定性や⼩さなスケールで起こる不安定性などのバリエーションが存在する。⼤きなスケールが⼤勢を⽀配するか︖⼩スケールも重要な役割を果たしうるか︖プラズマ乱流中のマルチスケール相互作⽤は必ずしも⼀筋縄ではいかないようだ。従来の単⼀スケールの駆動による乱流理論を超えた、マルチスケール乱流物理の地平を拓く。

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乱流は、駆動源からエネルギーが注⼊され、⾮線形混合を経てより細かなスケールの渦へと伝達し、やがて⼩さなスケールで散逸していく過程として知られる。磁場閉じ込めプラズマでは、密度・温度勾配などに起因する微視的不安定性が揺らぎの駆動源として働く。磁場強度や温度にも依存するが、装置サイズ数m に対し、イオンスケールの不安定性が数cm、さらに微細な電⼦スケールの不安定性がサブmm 程度である。これまでは、数⼗倍以上離れたこれらのスケールは階層分離されると考えられてきたが、近年の数値シミュレーション研究では、互いに作⽤しあい、プラズマ閉じ込め性能に影響を与えうることが指摘されている。核融合炉開発の観点からは、このようなマルチスケール乱流相互作⽤を実験的にどのように観測するか︖核燃焼プラズマの予測に対する妥当性や理論モデルの外挿性は︖といった課題があり、プラズマ理論の観点からは、単⼀のエネルギー注⼊・伝達・散逸過程で理解される従来的な乱流理論を越えて、異なるスケールの駆動源を持つマルチスケール乱流理論をどのように構築するか、計算科学的には、機械学習による相互作⽤モデリングや簡約シミュレーションの実現といった挑戦的課題が散在する。こうした描像は、イオンスケール不安定性と巨視的MHD 不安定性や⼤域的分布形成の相互作⽤といった現象にも共通する課題であり、また、乱流中のバックスキャッター現象への応⽤など流体物理学への波及も期待される。

[1] 前⼭伸也、解説「スーパーコンピュータ「京」で切り拓くプラズマ乱流研究の新展開」、プラズマ・核融合学会誌 91 (2015) 589-596.

[2] 岸本泰明、Li Jiquan、⼩特集「トーラスプラズマにおけるパリティ-4.乱流・MHD 系におけるマルチスケール相互作⽤とパリティ」、プラズマ・核融合学会誌 92 (2016) 552-563.