課題番号30

藤原⼤(核融合科学研究所)

負イオンの物理が拓く⾼効率粒⼦ビーム技術

次世代負イオン源・⾼効率イオン中性化技術の研究開発

カテゴリー: A1, A2, A3, B11, B15

⽬指すもの(output)︓

- セシウム添加を必要としない負イオン源や⾼効率な中性粒⼦ビーム、⾼集束ビーム、メンテナンス及び損傷が少ない中性粒⼦ビームの開発

波及(outcome)︓

- 核融合炉の実現

- ⾼エネルギー粒⼦と電流駆動の関連性を明確化

- ⾼速制御・予測制御技術

- 加速器・医療・産業分野への負イオンビーム技術の普及、⼤電流加速器システム

課題30イメージ

負イオンを⽤いた⼤電流・⾼エネルギー中性粒⼦ビーム

核融合プラズマでは、核燃焼の維持や電流を流すために⼤電流・⾼エネルギー中性粒⼦ビームをプラズマに⼊射する必要がある。中性粒⼦ビームは、正イオンに⽐べ⾼エネルギー条件でも中性化効率の⾼い負イオンをビームとして引き出し、中性化させビームを⽣成する。しかし、多量の負イオン⽣成のためにはイオン源内のプラズマ中で電⼦を原⼦または分⼦に付与させる必要性がある。また、ビームの⾼い中性化効率や集束性を得る必要性がある。このような課題を解決する新しい中性粒⼦ビームの基礎研究や技術開発が求められている。

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トカマク型核融合炉の特徴は、プラズマに数 MA 以上の⼤電流を流し、プラズマのもつ抵抗によってジュール発熱をさせ、プラズマを加熱することである。しかし、プラズマの抵抗値は温度の3/2乗に逆⽐例して⼩さくなるため、1keV 程度までしかプラズマを加熱することができない。そこで、外部からプラズマを加熱する1つの⽅法として、中性粒⼦ビームがある。ITER ではビームエネルギー1MeV、ビーム電流40A、パルス幅3600秒が求められている。そして、原型炉では2MeV、数⼗ A、定常運転の中性粒⼦ビームが必要と考えられる。このような、⾼エネルギー中性粒⼦ビームを⽣成するために、正イオンに⽐べ⾼エネルギー領域においても中性化効率が⾼い、負イオンがビーム源として使⽤されている。現在、負イオンの⽣成にはイオン源内に仕事関数が低いセシウムを添加する必要性がある。中性化には、イオンビームをガスに通過させることで、荷電交換により60%程度のイオンビームの中性化を⾏っている。しかし、メンテナンス性・経済性の観点から、セシウムを使わない負イオン⽣成及び、中性化効率の⾼い中性化⽅式の研究・開発が求められている。さらに、重要になってくるのが⾼い集束性を有するビームを作ることである。ビームの集束性はビームラインの損傷やプラズマの加熱・電流効率に⼤きな影響を与える。イオンを加速する電極やイオン源でのプラズマの状態にも⼤きく影響されることから、どのように集束性を担保するのかも⼤きな研究課題となっている。これらの研究は他分野(加速器、医療、産業)でも重要な基礎技術となる。また、中性粒⼦ビームによるプラズマの加熱・電流駆動効率に関する研究も、注⽬されている。これらの研究が将来の核融合炉設計に重要な指針を⽰すものとなる。

[1] ⽵⼊康彦ほか、⼩特集「粒⼦ビーム応⽤―その現状と展望―」、プラズマ・核融合学会誌(2002)