課題番号32

佐々⽊徹(⻑岡技術科学⼤学)

核融合プラズマを荷電粒⼦で⾼効率に加熱する

⾼密度プラズマ中の⾼エネルギー荷電粒⼦によるエネルギー付与過程

カテゴリー: A2, A3, B11, B14

⽬指すもの(output)︓

- ⾼エネルギー粒⼦の⾼密度プラズマへのエネルギー付与過程の理解

- 縮退・強結合プラズマ中での多体衝突問題・⾮線形阻⽌能の理論構築

波及(outcome)︓

- 爆縮プラズマ中でのα粒⼦,⾼速電⼦等による追加熱効率の改善

- 重イオンビーム・クラスターイオンビーム慣性核融合のターゲット設計

- 重粒⼦⾼エネルギー・⼤電流加速器の開発

- 多体衝突・散乱問題の統⼀的理解

課題32イメージ

⾼速点⽕型慣性核融合での⾼速電⼦による加熱の様⼦

荷電粒⼦ビームを物体に⼊射させると,ある⼀定の距離で⽌まり,標的物質内にエネルギーを付与する.このエネルギー付与過程は,シンプルな電⼦や陽⼦が常温固体の標的に⼊射する場合はよく知られているが,重粒⼦ビームが⾼密度プラズマに⼊射するなど複雑化した場合には必ずしも明らかになっていない.特に近年開発が進められている多数の原⼦が結合したクラスターイオンビームは,通常の荷電粒⼦ビームとはまったく異なる特徴的なエネルギー付与プロセスとなる可能性がある.これらの理論的・実験的解析を進めることは,核融合プラズマや⾼密度状態の研究だけでなく材料への粒⼦注⼊などに対しても⾮常に重要な研究となっている.

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⾼速電⼦,α粒⼦,重イオンビーム,クラスターイオンビームによる燃料標的へのエネルギー付与は,慣性核融合の加熱過程を理解する上で重要な課題となっている.特に,慣性核融合中でのα粒⼦加熱過程[1]を理解することは,レーザー等のエネルギードライバーに対する要求値を明らかにすることや,⾼速点⽕核融合⽅式の実現[2]の鍵となる.また,重イオンビームを⽤いた慣性核融合では,プラズマ中におけるビーム⾶程の制御により燃料の加熱過程を制御しながら爆縮へ導くことが期待できる.さらに近年加速器技術の発達により任意の質量電荷⽐のクラスター粒⼦を加速できるようになった[3].しかし,爆縮時のプラズマは縮退プラズマのため,既存の衝突・散乱モデルに従わず,エネルギー付与する過程を直接観測することが難しい.クラスタービームの持つ多粒⼦性による阻⽌能は強い⾮線形性を持つことが予測されている.これらの理論的・実験的解析を進めることは,爆縮プラズマ中でのα粒⼦,⾼速電⼦等による追加熱効率の改善,重イオンビーム・クラスターイオンビーム慣性核融合のターゲット設計のために必要である.さらに学術的には,重粒⼦⾼エネルギー・⼤電流加速器の開発や多体衝突・散乱問題の統⼀的理解を促進させる⼀助となる.

[1] A. R. Christopherson, et. al, Phys. Plasmas, 25, 012703 (2018)

[2] S. Fujioka, et al, Phys. Plasmas, 23, 056308 (2016)

[3] K. Takayama, et al, Phys. Lett. A, 384, 126692 (2020)