課題番号33

菊池崇志(長岡技術科学大学)

⾮線形場が結ぶ⼤強度ビーム物理と⾮中性プラズマ物理の共通性

重イオン慣性核融合のためのエネルギードライバー開発

カテゴリー: A1, A2, B5, B11

⽬指すもの(output)︓

- 重イオン慣性核融合に固有の技術である⼤強度重イオンビームの開発

波及(outcome)︓

- 核融合炉の実現.⼤強度荷電粒⼦ビーム物理と⾮中性プラズマの関係性の整理

課題33イメージ

⼤電流重イオンビームの挙動を模擬した荷電粒⼦の振る舞いの数値解析結果例

重イオン慣性核融合は,重イオンビームをエネルギードライバーとする慣性閉じ込め⽅式の核融合システムである[1].同じ慣性閉じ込め⽅式であるレーザー核融合と共通する部分が多いため,重イオン慣性核融合の研究分野では重イオンビームの研究開発が占めるウェイトが⼤きい.扱うビームパラメータとして⼤電流であることが特徴であり,⾮線形な場や集団的振る舞いのような⾮中性プラズマと共通の現象・課題を含んでいる[2].重イオン慣性核融合の実現のためには,いかにして⼤電流の重イオンビームを⽣成し,燃料標的まで制御して導くかが重要課題である.

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通常の粒⼦加速器で⽣成されるビームとはパルス⼤電流で空間電荷効果が⽀配的な挙動を⽰す点で⼤きく異なるため,⼤強度重イオンビームの研究・開発は重イオン慣性核融合に固有の研究課題・技術である.⼀⽅で,⼤強度荷電粒⼦ビーム物理と⾮中性プラズマは荷電粒⼦の集合体として⾮線形な⾃⼰場や空間電荷効果が引き起こす不可逆な挙動など共通の話題が多く,その関係性を整理することで重イオン慣性核融合の実現のみならず,プラズマ物理の理解増進にも貢献することができる.荷電粒⼦の運動を表す⽅程式系は適当なスケール変換を⾏うことで⼀致することが⽰され,この等価性を利⽤して実際に⾮中性プラズマ物理の実験装置を転⽤し,重イオン慣性核融合のためのビーム物理模擬実験を実施している[3].また,実験的観測だけでは不明な点が多いため,理論および数値解析のアプローチも併⽤して解決に取り組んでおり[3],図に⽰すような密度分布と⼀致しない⾮⼀様な温度変化・緩和現象などが⽰唆されている.

[1] 堀岡 他,J. Plasma Fusion Res. 89 (2013) 87

[2] 岡本 他,J. Plasma Fusion Res. 86 (2010) 451

[3] 菊池,曽我,堀岡,J. Plasma Fusion Res. 93 (2017) 345