課題番号34

本島厳(核融合科学研究所)

“燃料”を制すれば、核融合プラズマを制する

核融合プラズマにおける粒⼦制御

カテゴリー: A1, B7, B8, B11, B12

⽬指すもの(output)︓

- 適切な粒⼦制御のために燃料供給と燃料排出の最適なバランスを⾒出す

波及(outcome)︓

- 核融合炉でも適⽤可能な定常的な粒⼦制御法の確⽴

- ヘリウム排気真空ポンプの開発

- 混合プラズマを⽤いた熱プラズマプロセッシングへの応⽤

課題34イメージ

核融合プラズマ中の理想的な粒⼦の動き

燃料となる⽔素同位体は、⾼温のプラズマとなって核融合反応を起こし、ヘリウムと中性⼦に変換される。プラズマ中にはヘリウム以外にも多くのイオン種が含まれており、核融合反応を⻑時間維持するためには、プラズマ中の⽔素イオンの純度を⾼く保つ必要がある。そのため、⽔素以外のイオン種は、炉外へ効率よく排気する必要がある。また、核融合反応しなかった⽔素燃料も、⼀旦炉外で回収し、再利⽤する必要がある。このように、⽔素だけではなく、ヘリウムなどの不純物粒⼦の挙動を理解し、制御することが、安定な核融合プラズマを維持する重要な鍵となる。

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核融合炉において炉⼼プラズマへ燃料を補給する⽅法として、燃料である重⽔素あるいは三重⽔素を氷粒にしたものや⽔素ガスを真空容器内に注⼊する⽅法がある。プラズマに注⼊された⽔素は、⾼温の⽔素イオンとなり核融合反応を起こすが、時間の経過とともに必ずプラズマの外に排出される。核融合反応を維持するためには、純度の⾼い⽔素プラズマを⽣成し続けなければならないが、核融合反応で⽣成されたヘリウムがプラズマ中に蓄積されると、⽔素燃料が希釈され、核融合反応の低下につながる。また、炉壁の材料である⾦属が叩き出されるほか、周辺プラズマの制御のために希ガスを⼊射する必要があり、プラズマ中には、ヘリウム以外にも不純物イオンが含まれている。従って、核融合炉では、⽔素燃料はプラズマに効率的に供給し、⼀⽅でヘリウム等の不純物イオンは効率的に排気するという、ある意味で都合の良い要求を満たす必要がある。例えば、効率的な燃料供給として、⾃⾝が作るプラズマ密度勾配によるプラズマの内向き拡散を利⽤した粒⼦の輸送研究が⾏われているが、それでは不純物イオンも同時に蓄積されてしまう可能性があり、その解決のための研究が鋭意進められている。また、選択的に不純物イオンが外向きに吐き出される「不純物ホール」という興味深い現象も観測されており、シミュレーション等を使って理解が進められている。さらに、核融合プラズマは、多種イオンで構成する混合プラズマであり、多種イオン分布の⼀様性、⾮⼀様性について研究が進められている。混合プラズマの性質をうまく利⽤した、不純物の効率的な排気についての検討も進められている。このように、不純物粒⼦を含め、⽔素燃料粒⼦を制御することは、⾼性能核融合プラズマを制御することにつながる重要な課題といえよう。

[1] 若⾕誠宏ほか、磁場閉じ込め核融合プラズマの燃焼制御、プラズマ・核融合学会誌 75 (1999) 1346.

[2] 森崎友宏ほか、LHD における重⽔素実験の初期成果、プラズマ・核融合学会誌 97 (2021) 177.