課題番号37

菊池崇志(長岡技術科学大学)

エネルギー付与過程に対応した標的構造のバリエーション

慣性核融合の燃料標的構造

カテゴリー: A1, A2, A3, B14

⽬指すもの(output)︓

- 慣性核融合の炉⼼に特有な課題である燃料標的構造の理解

波及(outcome)︓

- 慣性核融合炉⼼の実現

課題37イメージ

重イオン慣性核融合燃料標的の爆縮過程.数 mm の燃料標的を nsec 程度の時間で急激に圧縮,固体密度の 1000 倍もの⾼密度達成を狙う.

慣性閉じ込め⽅式の核融合システムでは⼗分な核融合出⼒を得るために,”何らかの⽅法”で燃料標的を⾼密度に圧縮し⾼温に加熱する必要があり,そのための“ドライバー”と呼ばれる⾼強度レーザーや⼤電流イオンビームなどが研究開発されている.⼀⽅で,燃料標的はドライバーの“特徴”を活かした構造で設計されるため,ドライバーからのエネルギー付与をよく反映した構造とする.ドライバーと標的物質との相互作⽤は時空間(照射⾯+侵⼊深さ+パルス幅)次元の複雑な物理現象を扱うことになり,多変量解析を伴う困難な最適化問題である.

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慣性核融合炉の開発を進める上で炉⼼=燃料標的はドライバーや炉容器の設計を決める重要な項⽬であり,その物理現象の理解を中⼼として研究が進められてきている[1].レーザーをドライバーとして採⽤する場合はその集束性の⾼さや標的表⾯へ局所的にエネルギーを付与できる特徴を活かした燃料標的設計が⾏われ、イオンビームをドライバーとして採⽤する場合はその効率の良さや標的内部へエネルギー付与可能な特徴を活かした設計が⾏われる[2].磁場閉じ込め核融合システムで様々な磁場配位が提案されているように,慣性核融合でも直接照射型,間接照射型,中⼼点⽕,⾼速点⽕,衝撃波点⽕などの照射⽅式が考えられるため,ドライバーの照射パターンに適応した標的構造の設計が要求され,形状も真球,球+円錐(コーン),中に燃料球を含んだ円筒,同⼼球殻など⾒た⽬にも多様な燃料標的が検討されている.標的内部の構造も,中⼼部は空っぽの多層球殻あるいは逆に中⾝が詰まった中実球,スポット的なドライバーのエネルギー付与分布を緩和するための積極的な輻射の発⽣や低密度層の導⼊を図る構造などが様々に考えられている.⽶国・国⽴点⽕施設(National Ignition Facility: NIF)では間接照射型の標的構造で,アルファ粒⼦による⾃⼰加熱で燃料ゲインが 1 を超えた実験結果が得られているが[3],現状の実験結果を元にした商⽤炉への外挿にはまだ多くの課題が⼭積みであり,実験・理論・数値シミュレーションの多⾯的なアプローチで実現性を明らかにしていく必要がある.

[1] 森 他︓J. Plasma Fusion Res. 97 (2021) 352

[2] 川⽥ 他︓J. Plasma Fusion Res. 89 (2013) 89

[3] O.A. Hurricane, et al., Nature 506 (2014) 344