課題番号38

坂本隆⼀(核融合科学研究所)

磁場閉じ込めプラズマとの相互作⽤による固体物質の均質化過程

固体⽔素ペレット⼊射による磁場閉じ込め炉⼼プラズマへの粒⼦供給

カテゴリー: A1, A2, B8, B11, B12

⽬指すもの(output)︓

- 磁場閉じ込めプラズマと物質との相互作⽤の理解

波及(outcome)︓

- 磁場閉じ込め核融合プラズマにおける燃料供給シナリオの確⽴

課題38イメージ

磁場閉じ込めプラズマ中における固体⽔素の溶発発光分布

磁場閉じ込め核融合炉では,燃料である⽔素同位体の供給が重要な燃焼制御アクチュエータとなる.固体⽔素ペレット⼊射法は,固体⽔素を⾼速でプラズマに⼊射することによって,固体の⽔素同位体が溶発,電離して磁場を感じるようになる前に,⽔素同位体粒⼦をプラズマ内部へ供給する⽅法である.固体⽔素ペレット⼊射による粒⼦供給を確⽴するためには,固体⽔素がプラズマからの熱流束を受けて溶発する過程と,溶発した粒⼦によって形成される⾼密度プラズモイドが磁場との相互作⽤によって背景プラズマへ均質化していく過程の理解が鍵となる.

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磁場閉じ込め核融合炉では,核融合反応によって⽣成されるエネルギーによって⾼温のプラズマが維持されるようになるため,燃料である⽔素同位体の供給が本質的な燃焼制御アクチュエータとなる.⼀⽅で,荷電粒⼦の磁⼒線を横切る輸送を抑制することによって,プラズマを閉じ込める磁場構造は,燃料粒⼦の供給も妨げてしまうため,プラズマの閉じ込めと粒⼦供給の両⽴が課題となっている.固体⽔素ペレット⼊射法は,1000 m/s 程度の速度で固体⽔素をプラズマに⼊射する粒⼦供給⽅法であり,固体の⽔素同位体が溶発・電離して磁場を感じるようになる前に,⽔素同位体粒⼦をプラズマ内部へ供給することができる.⼀⽅で,固体⽔素の溶発現象は,プラズマの電⼦温度に強く依存して促進されることから,プラズマが⾼温かつ⼤規模になる核融合炉における燃焼プラズマでは,プラズマ中⼼部へ固体⽔素を届かせることが難しくなる.

固体⽔素ペレットによる粒⼦供給を理解するためには,2 つの素過程を理解することが重要である.すなわち,1)溶発過程︓固体⽔素がプラズマからの熱流束を受けて溶発して中性ガスになる過程と,2)均質化過程︓中性ガスがプラズマからの熱流束でさらに加熱されて形成される⾼密度プラズモイドが,背景プラズマとの相互作⽤によって均質化する過程である.⾼密度プラズモイドの均質化過程では,プラズモイドが磁⼒線に沿って拡がると同時に,閉じ込め磁場の影響を受けて局所的な内部電場を発⽣することにより,磁場を横切るドリフト輸送を⽣じさせることから,磁場構造をうまく使って,粒⼦をプラズマ中⼼部へ輸送する研究が⾏われている.

[1] B. Pégourié, "Review: Pellet injection experiments and modelling", Plasma Physics and Controlled Fusion 49 (2007) R87.

[2] 坂本隆⼀,『磁場閉じ込め核融合におけるペレットの溶発の物理と応⽤』,プラズマ・核融合学会誌 89, 544 (2013).