課題番号40

藤⽥隆明(名古屋⼤学)

トカマクプラズマの電流分布の最適解は何か︖

圧⼒・電流・回転の制御によって⾼い核融合出⼒と⾼いエネルギー増倍率を⽬指す

カテゴリー: A1, B1, B2, B3, B11, B12

⽬指すもの(output)︓

- ⾼いベータ値、⾼い閉じ込め性能、⾼い⾃発電流割合の達成と維持

波及(outcome)︓

- ⾮線形で⾃律性が強い系の制御技術の開発

課題40イメージ

プラズマ中に形成される凹状電流分布と断熱層

トカマクプラズマではプラズマ電流が閉じ込め磁場を形成するので、電流の径⽅向分布がプラズマの特性を⼤きく左右する。中⼼にピークした凸状の分布では⾼いプラズマ圧⼒(⼤きな核融合出⼒)を得やすいが、プラズマを維持するための外部加熱パワーが⼤きくなる。平坦な分布や凹状の分布(図)とすれば、外部加熱パワーは⼩さくなるが、⾼いプラズマ圧⼒を得るためにプラズマの圧⼒・電流・回転の分布の適切な制御が必要となる。⾮線形で⾃律性が強い系の制御という挑戦的な課題の解決に向けての研究が進められている。

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核融合炉の炉⼼プラズマには、⾼い核融合出⼒密度と⾼いエネルギー増倍率が必要とされる。そのため、プラズマ圧⼒を⾼くするとともに、外部加熱パワーを低くする必要がある。トカマクでは、外部加熱パワーはプラズマ圧⼒を維持するのに必要なパワーとプラズマ電流を維持するのに必要なパワーの⼤きい⽅で決まる。外部から中性粒⼦ビームや⾼周波を⼊射する⽅法のみでは電流駆動のためのパワーが⼤きくなってしまうため、プラズマ内に⾃然に流れる電流、⾃発電流(ブートストラップ電流)の利⽤が重要である。⾃発電流を⼤きくするためには、凸状の電流分布よりも平坦あるいは凹状の分布が好ましい。さらに、それらの分布では⼤きな圧⼒勾配を有する内部輸送障壁(断熱層)が形成されやすく、プラズマ圧⼒を維持するのに必要なパワーも⼩さくなる(課題番号 2 参照)。その結果、低電流・⼩体積のコンパクトな核融合炉を実現できる可能性がある。⼀⽅で、電流分布を凹状に近づけるほどプラズマが不安定になりやすい。理論的には、圧⼒分布と電流分布を適切な形状に保ちかつプラズマを回転させて導体壁の安定化効果を得ることで、この不安定性を抑制し⾼いプラズマ圧⼒を維持できると予測されているが、その実現は挑戦的な課題である。熱輸送、⾃発電流、運動量輸送などを通じて圧⼒分布と電流分布、回転分布は互いに依存している。核融合炉では、圧⼒分布の制御ノブである外部加熱は核融合による加熱(アルファ加熱)より⼩さく、電流分布の制御ノブである外部駆動電流は⾃発電流より⼩さい。プラズマの回転も⾃発的に決まる部分が⼤きくなると考えられている。電流分布の選択においては、このように⾮線形で⾃律性が強い系を制御する技術の開発(課題番号 44 参照)が鍵となる。

[1] 藤⽥隆明, 解説「JT-60 トカマクプラズマにおける電流分布制御と閉じ込め性能の改善」, ⽇本物理学会誌 Vol. 5, No. 8,559-567 (2002)