課題番号41

徳沢季彦(核融合科学研究所)

突発する⼤熱負荷への備え

⾼プラズマ閉じ込め特性と低ダイバータ熱負荷を両⽴するカギとなるELM 制御

カテゴリー: A1, A2, B2

⽬指すもの(output)︓

- 周辺部突発的熱・粒⼦輸送現象の解明

- 効率的な熱・粒⼦制御⽅法の探索

波及(outcome)︓

- ダイバータ構造の確⽴

- コアから周辺・ダイバータまでの全領域を包括する輸送物理の理解

- 突発的⼤熱負荷制御⽅法の確⽴

- ⼀般社会における突発現象、耐熱技術への展開

課題41イメージ

炉⼼プラズマから突発的に⽣じる熱流

1980 年代に発⾒された⾼閉じ込めプラズマ運転モード(通称H-mode)は、磁場閉じ込めプラズマ研究における⼤きなブレークスルーであった。このH-mode プラズマでは、プラズマ周辺部に⾃発的に輸送障壁が形成されコア部のプラズマ性能が⼤きく向上する。⼀⽅、この輸送障壁形成部の急峻な圧⼒勾配とその勾配により駆動される周回電流によって、周辺局在化モード(Edge Localized Mode; ELM)と呼ばれる、⼤きな熱負荷を伴った熱・粒⼦放出現象が突発的に発⽣することがある。このELM を効果的に制御することが核融合炉成⽴のカギとなっている。

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原型炉での定常運転は、H-mode プラズマによる⻑時間運転となると考えられているため、いわゆるgiant ELM(type-I ELM)によるダイバータ損耗への対策が最も重要な課題となっている。そのためダイバータ材として⾼耐熱性能の材料を開発することやダイバータの構造をより効果的な冷却が可能なデザインにすること、あるいは液体ダイバータを適⽤することなど様々な対策が検討されている。⼀⽅、原因であるELM そのものを制御するという研究も進んでいる。共鳴磁場摂動(RMP)コイルを⽤いて周辺部にストキャスティックな磁場構造を与え輸送を増⼤させることでELM 発⽣を抑制する⼿法や⾼繰返しペレット⼊射による擾乱によって⼩振幅のELM を発⽣させる⽅法などが提案され各種装置で実験検討が進んできている。またQH-mode やI-mode などのELM が発⽣しない運転モードも発⾒されており、その運転領域の拡張と、物理機構の理解の進展が期待されている。ペデスタルを含むプラズマ周辺部は外部の真空領域やダイバータ領域との境界であり、同時に輸送障壁を挟みつつプラズマコア部とを接続する領域であることから、プラズマ全体の特性を決定する重要な領域であるので、これら全ての領域を統合する理論シミュレーションコードの開発とそれによる物理理解の深化が期待されている。このような突発現象は、太陽フレア爆発などのプラズマ物理だけでなく、⽕⼭噴⽕・地震発⽣、あるいは株相場変動など社会⼀般にも散⾒される現象であり、その展開が期待される。

[1] 相⽻信⾏、解説「エッジローカライズドモードに関する理論・シミュレーション研究の進展」、プラズマ・核融合学会誌 95(2019)99-106.

[2] 鎌⽥裕 他、⼩特集「Edge Localized Mode(ELM)研究の最近の成果」プラズマ・核融合学会誌 82(2006)565-598.