課題番号42

藤原⼤(核融合科学研究所)

ヘリウム粒⼦の⼀⽣を追え︕

燃焼プラズマにおけるアルファ粒⼦閉じ込め・輸送を制御

カテゴリー: A1, A2, B2, B3, B6, B12

⽬指すもの(output)︓

- アルファ粒⼦の閉じ込め・輸送の物理解明

- アルファ粒⼦の制御

波及(outcome)︓

- 核融合炉の実現と⾼効率化

- 炉⼼プラズマの閉じ込め時間に対する条件の緩和

- ⾮線形物理、⾼速制御技術、予測制御技術

課題42イメージ

⾼エネルギー粒⼦のシミュレーション

(提供︓鈴⽊航介)

核融合炉では⽔素同位体イオンの核融合反応によって⽣成される⾼エネルギーアルファ粒⼦(ヘリウム粒⼦)がプラズマ中のイオンや電⼦と衝突することでプラズマを加熱し、⾼温プラズマを維持させる。役割を終えたヘリウム粒⼦(ヘリウム灰)は核融合炉内に残ることになるが、核融合反応の妨げになるために炉外に排気する必要がある。⾼エネルギーアルファ粒⼦の閉じ込めからヘリウム灰排気までの閉じ込め・輸送・排気に関する物理研究が急務の課題である。さらに、核融合の実現には物理解明からヘリウム粒⼦の⼀⽣を制御する技術開発が求められる。

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核融合反応によって⽣成される⾼エネルギーアルファ粒⼦(ヘリウム粒⼦)の研究⽬的は、①⾼エネルギーアルファ粒⼦の閉じ込めは古典的/新古典的か︖②⾼エネルギーアルファ粒⼦からバルクプラズマへどのようにエネルギーが移⾏するのか︖③プラズマ中の揺動・不安定性によって⾼エネルギーアルファ粒⼦は輸送されるのか︖④⾼エネルギーアルファ粒⼦の増⼤により不安定性は励起されるのか︖⑤プラズマの加熱でエネルギーを失ったヘリウム粒⼦(ヘリウム灰)はプラズマのコア部から周辺部へ輸送されるのか︖を実験的に明らかにすることである。そして既知の理論と⽐較し、アルファ粒⼦の閉じ込め・輸送・排気までの⼀連の物理を理解することが基礎となる。これには、実験とシミュレーションの観点から同時に研究を進めていく必要がある。さらに、アルファ粒⼦の閉じ込め・エネルギーの移送・輸送を外部から制御することができれば、将来のエネルギーである核融合炉の実現が可能となる。この制御に関しては、アルファ粒⼦とMHDモード/ITB/ETB などとの相互作⽤を考慮した制御⼿法などが提案され活発に研究がなされている。また、ヘリウムはカーボンやタングステンなどの壁材料やダイバータなどに蓄えられてしまうなどの問題もあり、プラズマと壁の相互作⽤なども考慮する必要性がある。このように、ヘリウムの⽣成から排気まで多岐にわたる物理を明らかにしていかなければならないため、今後⾮常に重要な研究分野になっていくと考えられる。

[1] ⻑壁正樹ほか、講座「輸送解析から⾒た⾼エネルギー粒⼦計測⼿法」、プラズマ・核融合学会誌(2004)

[2] 永岡賢⼀ほか、⼩特集「ジオスペースと実験室におけるプラズマの波動粒⼦相互作⽤の進展」、プラズマ・核融合学会誌(2021)