課題番号43

釼持尚輝(核融合科学研究所)

狭い隙間から診てプラズマを制御する

限られた計装による運転制御

カテゴリー: A1, A2, B3, B6, B10, B12

⽬指すもの(output)︓

- プラズマ運転シナリオの確⽴

- 炉⼼プラズマ⽴ち上げ・燃焼、定常維持

波及(outcome)︓

- 複雑系の制御

- 燃焼プラズマ制御⼿法の確⽴

課題43イメージ

限られた計装による核融合炉の制御

提供︓国⽴研究開発法⼈量⼦科学技術研究開発機構

核融合発電炉では、中性⼦と誘導γ線などの⾼放射線環境が想定されており、またトリチウム燃料を⾃⼰⽣産する機構(ブランケット)の占有⾯積の確保が必須となるため、計測器に許容される空間も⼤きな制約を受ける。更に、ブランケット等の複雑な構造物による渦電流が電磁場計測に及ぼす影響も複雑で無視できない。このような条件下では、従来の計測器が使⽤できなかったり、感度が著しく低下したりするが、核融合発電炉の運転にはこのような環境下でも炉⼼プラズマ⽣成や燃焼、定常維持に必要⼗分な計測器と計測精度を達成する必要がある。

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核融合発電炉では限られた計装により炉⼼プラズマ⽴ち上げや燃焼、定常維持を⾏う必要があり、核融合発電を⾏うのに有⼒なトカマク型とヘリカル型の発電炉に関して、それぞれにおいて必須と考えられる計測の整備や、新しい計測概念の考案が重要である[1,2]。

トカマク型の発電炉の制御は⼤きく分けて平衝制御と燃焼制御に分類することができ、その制御に必要な計測も2つに分類できる。プラズマ電流が磁気⾯を形成するので、位置・形状計測、平衡の再構成の観点からも磁気計測は必須である。発電炉では、プラズマ電流の⼤部分をブートストラップ電流(圧⼒駆動電流)が担うため、圧⼒分布とその勾配を求めなければならない。核融合出⼒の直接的な測定、トリチウム増殖率の確保のために、詳細な中性⼦計測は必須である。ダイバータ板の健全性を確保するために、ダイバータ板表⾯近傍の温度分布、特にストライクポイントの位置の計測を⾏う。

⾃⼰点⽕定常運転が可能なヘリカル型の発電炉においては、その運転制御は如何にして⾃⼰点⽕領域に到達し、それを維持するかということに帰着する。また、無電流プラズマであるため、その制御は外部加熱⼊⼒によるパワーバランス制御と、燃料供給による粒⼦バランス制御によって⾏われる。原理的には線平均電⼦密度の測定のみで出⼒の⼀定制御が可能であることが確認されているが、出⼒の安定制御のためには、核融合出⼒(中性⼦発⽣数)の評価は必須であり、それに加え周辺電⼦密度の測定ができることが望ましい。

[1] 「核融合原型炉の計装制御」、原型炉の計装制御に関する研究会 報告書編集委員会、NIFS-MEMO-68、2014

[2] 「核融合原型炉の運転制御」、原型炉の運転制御に関する研究会、NIFS-MEMO-80、2017