課題番号44

釼持尚輝(核融合科学研究所)

核融合プラズマの⾃動運転

リアルタイムプラズマ制御

カテゴリー: A1, A2, B10, B11, B12, B13

⽬指すもの(output)︓

- 計測結果を基に実時間でのプラズマ制御

波及(outcome)︓

- AI による最適化

- プラズマ特性の向上

- 予測性能の向上

- ⾼速データ解析技術の開発

- エッジ AI

課題44イメージ

AI による核融合プラズマ制御のイメージ

提供: the EUROfusion Consortium

磁場閉じ込め型の核融合発電炉は1年近くプラズマ放電を続けることになる。しかし、プラズマの変化は⾮常に短時間で起き、さらにわずかな不安定化が全体に影響を与えてしまう可能性があるため、安定なプラズマを⾃動で制御する必要がある。そのためには「どのようにプラズマの挙動を事前に予測し、どのようにプラズマを安定化させるのか︖」が重要な問いとなる。これには応答の速い(応答速度︓1 ミリ秒以下)計測技術と、プラズマの応答を再現できる精密なシミュレーション、プラズマの挙動を予測する AI の活⽤が鍵となる。

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核融合発電炉の実⽤化のためには、①装置の健全性を確保しつつ、②定常かつ安定な電⼒出⼒が必要である。このためにはディスラプションの回避・緩和及び ELM の緩和(①に関連)、ダイバータデタッチメントの制御(①②に関連)や、⾼ベータ・⾼密度及び⾼⾃発電流割合(②に関連)を⾃在に制御する必要がある。これら制御対象に対して、⾼い⾃律性を有する燃焼プラズマの過渡応答特性と制御応答特性を、実験と理論・シミュレーションの両側⾯から明らかにし、実時間の予測を含めたシミュレーターの構築が重要となる。この予測に基づき、ガスパフ、中性粒⼦ビーム(NBI)、電⼦サイクロトロン(EC)波、及び外部コイルなどを⽤いてグローバル量(密度、中性⼦発⽣率、及び放射損失など)やローカル量(温度、回転速度、及び電流分布など)、プラズマ不安定性、及びプラズマ平衡を制御することで⾃動運転を⾏う。⼀⽅で、実時間でプラズマを制御するためにはグローバル量だけでなくローカル量や磁場の変化量などを⽤いた複雑な計測量を瞬時に物理量に変換し、得られた物理量を⽤いて燃焼プラズマの挙動をリアルタイムに予測する必要があるが、近年は複雑な計算の⾼速化に対して機械学習の導⼊が成果を上げている。今後の課題としては、⾼放射線場かつ計測器に制限があり(課題番号 43 参照)、アクチュエーターが応答速度や制御パラメータにおいて制約される発電炉で、信頼性のある制御⼿法を構築することが挙げられる。

[1] 浜⼝智志 他、⼩特集「プラズマ・インフォマティクス-データ駆動科学のプラズマへの応⽤」、プラズマ・核融合学会誌、95(2019)535