課題番号45

井通暁(東京⼤学)

低アスペクト⽐化トーラスの pros and cons

低アスペクト⽐化による⾼性能トカマク型発電炉の実現に向けて

カテゴリー: A1, A2, B1, B2, B3, B12

⽬指すもの(output)︓

- トーラスプラズマのベータ限界・安定性・閉じ込め性能の向上

波及(outcome)︓

- 核融合発電コストの低減

- ⼩型中性⼦源の実現

課題45イメージ

低アスペクト⽐と⾼アスペクト⽐のトーラス

核融合発電の普及のためには発電コストの低減が必須である。そのためには同じ強さの磁場でより⾼いプラズマ圧⼒を保持する(=⾼ベータ)ことが望ましいが、圧⼒の勾配が⼤きすぎることに起因する不安定性を回避しないといけない。プラズマのトーラス形状を低アスペクト⽐(=主半径/⼩半径)化すると、より安定性の⾼い状態が⾃発的に形成されることから、従来型トカマクに⽐べて⼤きいベータ値を達成しつつ優れた閉じ込め性能が得られる。ただし、低アスペクト⽐化の実現のためには、狭くなった装置中央部の構造や機器を⼩型化あるいは撤去することが要求されるため、プラズマ性能と⼯学的課題を両⽴する解を⾒出す必要がある。

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トカマクプラズマのベータ値は圧⼒勾配によって駆動されるバルーニング不安定性によって制限されることが Troyon スケーリングとして知られているが、アスペクト⽐を低くすることによってもたらされる低内部インダクタンスと⾼楕円度が規格化ベータ値と規格化電流の双⽅を増加させ、結果的に 40%を超えるベータ値が球状トカマク型実験において達成されている。エネルギー閉じ込め時間についても通常のトカマクと同等以上の性能が確認されていることに加えて、特に電⼦衝突頻度に対して良好な依存性を有していることから、燃焼状態でのさらなる性能向上が期待される。このように低アスペクト⽐化はプラズマそのものには望ましい性能をもたらしうる反⾯、その実現のためにはいくつかの⼯学的課題を克服する必要がある。特に、装置中央部に機器や構造物を設置する空間が不⾜することから、中⼼ソレノイドコイル、断熱層、ダイバータ、ブランケット、第⼀壁などに関する制約が厳しくなる。電流駆動⼿法や壁/ダイバータの熱/中性⼦負荷低減などに関するブレイクスルーが必要とされるが、これらの課題を克服して低アスペクト⽐プラズマの持つ性能を引き出すことができれば、炉⼼プラズマの⾼性能化を実現でき、核融合発電の経済性向上に寄与することができる。また、発電⽤以外にも⾼フラックスの中性⼦源としての可能性を有していることから、材料照射試験⽤の⼩型核融合炉を⽬指した研究開発も進められている。

[1] 前川孝ほか、プラズマ・核融合学会誌、88、pp.706-759 (2012).【⼩特集】