課題番号46

井通暁(東京⼤学)

⾮平衡状態を利⽤してトカマク型炉⼼プラズマを⼿軽に⽣成したい︕

磁気ヘリシティ⼊射やプラズマ合体による球状トカマク⽴ち上げ

カテゴリー: A2, A3, B1, B2, B5, B12

⽬指すもの(output)︓

- 中⼼ソレノイドコイル除去によるトカマクの低アスペクト⽐化

波及(outcome)︓

- ⾃⼰組織化現象・磁気リコネクション現象の活⽤

- 天体プラズマ現象の解明

課題46イメージ

球状トカマク合体⽣成時に発⽣する磁気リコネクション

トカマク型核融合炉を低アスペクト⽐化する際に⽣じる装置中央部の構造的制約を回避するために克服すべき⼯学的課題の⼀つが、トカマク型プラズマの⽣成に使⽤されるソレノイドコイルを取り除くことである。代替⼿段として、⾼周波電流駆動を⽤いる⼿法と、電極や外側コイルを利⽤した電流駆動を⽤いる⼿法が研究・開発されている。特に後者では最終的なトカマク平衡とは異なった電流分布をプラズマ中に形成し、そのプラズマが⾃然にトカマク平衡に遷移していくという性質を利⽤しており、安価な機器によってソレノイドコイルを代替できる可能性がある。

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トカマク型装置では、(1) プラズマの⽣成、(2) プラズマ電流の⽴ち上げ、(3) 初期電⼦加熱、という3つの重要な役割を、装置中央部のソレノイド(Center Solenoid : CS)コイルが果たしている。ところが、球状トカマク型装置では中央部に設置できる機器に制約が⽣じることから、CS コイルを⽤いることなく定常加熱/電流駆動のターゲットとなりうるトカマクプラズマを形成する必要がある。トカマク型プラズマで研究の進んでいる⾼周波電流駆動以外の代替⼿段として、電極を⽤いた同軸ヘリシティ⼊射/局所ヘリシティ⼊射、外側コイルの誘導を利⽤したプラズマ合体などを⽤いた⼿法が開発されている。同軸ヘリシティ⼊射では、真空容器内に同軸状に設置された電極間に電圧を印加することによって磁⼒線に沿った電流を流し、その電流⾃⾝が作り出すローレンツ⼒によって電流経路が真空容器内に広がった後に、磁気リコネクションによって閉じた磁気⾯を形成し、球状トカマク平衡へと緩和する。局所ヘリシティ⼊射では真空磁場に沿って流すらせん状の電流が、磁気リコネクションを介して軸対称電流に変化し、トカマク型配位へと緩和する。プラズマ合体法では、軸⽅向に離れた場所に球状トカマクプラズマを2つ⽣成し、それらが磁気リコネクションを介して単⼀の球状トカマクを形成する(図を参照)。それぞれに装置構成やプラズマの振る舞いは異なっているが、いずれも⾮平衡・不安定な状態から、「磁気ヘリシティ保存に基づく緩和」や「磁気リコネクション」といった素過程を通して球状トカマク配位が⾃発的に形成されることを利⽤しており、⾼プラズマ電流、⾼密度、⾼温のプラズマを⽣成し、追加熱によって定常維持された状態へ接続することが期待される。

[1] 前川孝ほか、プラズマ・核融合学会誌、88、pp.706-759 (2012).【⼩特集】