課題番号47

高橋俊樹(群馬大学)

開いた磁場による閉じ込め(開放系配位)で核融合炉は可能か︖

直線開放系配位における端損失改善の取り組み

カテゴリー: B1, B3, B5, B15

⽬指すもの(output)︓

- シンプル形状を活かした核融合発電システムの⾼効率化

波及(outcome)︓

- 境界プラズマ研究への応⽤

- 先進燃料核融合炉への応⽤

- ⾼効率直接エネルギー変換

課題47イメージ

Lockheed Martin の Compact Fusion Reactorの装置概念図

直線開放系の特⻑を活かした境界プラズマ研究(特に輸送物理研究)は進捗し、ダイバータ(課題番号 24 など)シミュレータや新たな燃料供給法など、核融合分野への技術応⽤研究も進⾏中である。⼀⽅で、端損失は開放系固有の課題であり、特に電⼦閉じ込め改善は必須となるため、炉⼼プラズマとして開放系配位が成⽴するには乗り越えるべき障壁がある。それでもシンプルな構造で発電コストを削減できる魅⼒は⼤きく、海外では磁場反転配位(FRC)、シアフローで乱流を抑制する遠⼼⼒ミラー、ミラーとカスプを組み合わせた配位、などが研究されている。

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直線開放系は、単純ミラーや⾮軸対称系のミラーなどに加えて、衝突合体と NBI 及び端部バイアス制御で配位維持時間を伸⻑してきた FRC、ARPA-E の BETHE プログラムでファンドを獲得している遠⼼⼒ミラー、ロッキードマーティン社のミラーとカスプを組み合わせた配位(CFR)、また CFR と類似の概念ではあるが内部ヘルムホルツコイルにより装置中央でソレノイド磁場を完全キャンセルする⾮断熱トラップなど、複数の⽅式で炉⼼プラズマとしての研究が進められている。磁場コイルと閉じ込め容器が鎖交する環状閉じ込めと異なり、直線開放系は閉じ込め容器の保守交換が容易で、また開いた磁⼒線に沿って⾼エネルギー荷電粒⼦を直接エネルギー変換器へ導⼊できる。これにより維持コスト削減と発電効率向上が期待できるため、発電システムとしてのプラント効率向上を⾒込める。しかし、現在開発中のいずれの⽅式においても、磁⼒線⽅向の輸送特性改善(特に磁場に凍結しやすい電⼦の閉じ込め改善)は重要な課題として残されている。⾼ベータプラズマでは放射損失が低減されるので、⾼温が要求される先進燃料(例えば D-3He や p-11B)を利⽤でき、よって⾼エネルギー荷電粒⼦を⽣成する先進燃料炉の開発においては、直接エネルギー変換器と親和性の⾼い直線開放系プラズマへの期待が⼤きい。

[1] 北條仁⼠ほか、講座「開放端磁場プラズマの物理」、プラズマ・核融合学会誌 75、693 (1999).