課題番号48

浅井朋彦(⽇本⼤学)

マイルド核融合プラズマコンセプト︖

磁化標的核融合(magnetized target fusion︓MTF)

カテゴリー: A2, A3, B1, B2, B3, B14

⽬指すもの(output)︓

- 磁場閉じ込め型のパルス炉

波及(outcome)︓

- 核融合炉へのファストパス

- 液体ダイバータの開発

- パルスパワー研究やその応⽤

課題48イメージ

Compact Fusion System 社による MTF コンセプト

磁化標的核融合(Magnetized Target Fusion: MTF)では,単連結構造であるコンパクトトロイド(CT)プラズマによる「標的」を,液体⾦属や⾦属フォイルなどの導体でできた円筒状領域に打ち込み,プラズマを導体ごと核融合条件まで圧縮・加熱する。MTF は,この過程を繰り返すことで,慣性核融合より低い 1026/m3 程度の密度と,磁場閉じ込め核融合より短い100マイクロ秒程度の閉じ込め時間による「マイルド」な核融合条件によるエネルギー⽣産を⽬指す炉⽅式の総称である。MTF が⽬指す閉じ込め時間は,標的となる CT 中の不安定性の成⻑時間よりも短く,また核融合炉に必要とされる多くの要素について「中間」となるパラメータ領域を⽬指すことから,他の⽅式で開発された既存の技術が流⽤できるとされている。

----------------------

1972 年に⽶国・Naval Research Laboratory の LINUS 計画から研究・開発がスタートし,現在はカナダ・General Fusion 社をはじめ,ARPA-E が重点的に⽀援していることから,Helion Energy 社,Compact Fusion Systems 社など⽶国の⺠間企業でも精⼒的に研究が進められている。MTF では,FRC(磁場反転配位)やスフェロマックなど,単連結構造であるコンパクトトロイド(CT)プラズマを液体⾦属中に⽣じた「渦」や「ライナー」と呼ばれる円筒状の⾦属フォイル中に⾼速に打ち込み,これらの導体ごとプラズマを圧縮・加熱することで核融合条件の達成を⽬指す。圧縮⽅法については,ピンチによる⾦属円筒の圧縮や液体⾦属中を伝播する⾳響衝撃波による爆縮などさまざまな⽅法が提案されている。現在主流であるのは,⾼速で回転させた液体⾦属に⽣じる「渦」によって中⼼に形成された空洞に CT を⼊射し圧縮する,「液体⾦属ライナー」⽅式である。この液体⾦属ライナーは,再⽣可能な第⼀壁であると同時に,ブランケットとしても機能し,また,発⽣した熱を外部に取り出す役割も果たすとされている。さまざまな⼿法が提案され,各⽅式においてライナーの換装やエネルギー変換など解決すべき課題も異なるが,代替⽅式として研究開発が活発化している。

[1] M. LABERGE,「ジェネラルフュージョン社における衝撃波磁化標的核融合開発」プラズマ・核融合学会誌 93,pp.32 (2007).