課題番号7

藤原⼤(核融合科学研究所)

⾼エネルギー粒⼦の損失を⽌めろ︕

⾼エネルギー粒⼦起因の不安定性とその制御

カテゴリー: A1, B2, B3, B4, B6, B11

⽬指すもの(output)︓

- ⾼エネルギー粒⼦駆動不安定性と⾼エネルギー粒⼦輸送を予測・制御

- ⾃⼰組織化の予測・制御

波及(outcome)︓

- 核融合炉の実現と⾼効率化や炉⼼プラズマの閉じ込め時間に対する条件の緩和

- 宇宙物理、⾮線形物理、実空間・速度空間物理、⾼速制御技術、予測制御技術

課題7イメージ

アルフベン固有モードによる⾼エネルギー粒⼦の吐き出し

磁場閉じ込め型核融合炉において、⾼温プラズマは核融合反応で⽣成される⾼エネルギーアルファ粒⼦によって加熱され、核融合反応に必要な⾼温状態が⾃律的に維持される。このことから、⾼エネルギー粒⼦をプラズマ中に良好に閉じ込めることが核燃焼プラズマ⽣成の必須条件とされている。しかし、⾼エネルギー粒⼦がプラズマ中で増⼤することで不安定性が励起され、⾼エネルギー粒⼦が外へ輸送されることが危惧されている。このように、プラズマを加熱する役割を担う⾼エネルギー粒⼦の輸送とその制御を明らかにしていくことは重要な研究課題である。

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核燃焼プラズマは、核融合反応で⽣成される⾼エネルギーアルファ粒⼦によりプラズマを加熱し、核融合反応に必要な⾼温状態が⾃律的に維持される。このため⾼エネルギー粒⼦の良好な閉じ込めが核燃焼プラズマの実現には必須の条件である。しかし、⾼エネルギー粒⼦がプラズマ中で増⼤し密度勾配が形成されると、アルフベン固有モードなどの磁気流体⼒学振動が⽣じ、波動粒⼦相互作⽤により⾼エネルギー粒⼦の輸送と損失が引き起こされることが知られている。また、⾼エネルギー粒⼦駆動不安定性が、⾮線形効果によって⾼エネルギー粒⼦分布へ影響を与え、⾃⼰組織化を誘発していることも知られている。今後は乱流と⾼エネルギー粒⼦の相互作⽤に関する研究も、実験とシミュレーションの両側⾯からジャイロ運動論を⽤いた運動論的電磁流体⼒学の研究が活発化すると考えられる。⼀⽅、⾼エネルギー粒⼦起因の不安定性を制御する⽅法が提案されている。まず、⾼エネルギー粒⼦の分布を制御する⽅法が提案されている。イオンサイクロトロン加熱や中性粒⼦ビーム加熱による直接的分布制御や、電⼦サイクロトロン加熱により熱プラズマの分布を制御する間接的制御などがある。次に、直接アルフベン波に⼲渉することで不安定性を制御する⽅法が提案されている。電⼦サイクロトロン電流駆動によりアルフベン連続体に⼲渉する制御法や、三次元の外部共鳴摂動磁場を印加することでアルフベン波を制御する⽅法である。このように、プラズマを加熱する役割を担う⾼エネルギー粒⼦の物理を明らかにし、輸送や閉じ込めを制御する技術を創成することは重要な研究課題である。

[1] ⻑壁正樹ほか、講座「輸送解析から⾒た⾼エネルギー粒⼦計測⼿法」、プラズマ・核融合学会誌(2004)

[2] 永岡賢⼀ほか、⼩特集「ジオスペースと実験室におけるプラズマの波動粒⼦相互作⽤の進展」、プラズマ・核融合学会誌(2021)