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平成25年12月24日
「ほこり」を捕らえる -リアルタイム・ダスト検出器-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 将来の核融合発電を目指して研究が進められている高温プラズマは、真空容器内で磁場のカゴに閉じ込められて保持されているため、容器の壁に直接触れることはありません。しかし、磁場のカゴの外に出た温度の低いプラズマは、ある特定の場所に終端されるなど、プラズマが壁表面と相互作用する領域があり、その際、壁材料を削り出したりします。その量は微量ですが、集まってダスト(ほこり)となって、プラズマ中に混入することもあります。今回は、大型ヘリカル装置(LHD)で行われている、ダストをリアルタイムで観測する研究について紹介します。

 ダスト(ほこり)は、プラズマから飛び出てくる粒子が入射する真空容器の壁や、プラズマを終端させる場所の受熱板が少しずつ削られて損耗することにより発生します。将来の核融合発電所は、1年以上にわたって連続運転されるため、こうした材料の長期にわたる損耗量を評価することは重要です。そこで、LHDにおいて、ダストの発生頻度をリアルタイムで測定することにより、プラズマの状態とダストの発生量の関係を調べ、容器内材料の損耗量を推測する研究を進めています。
今回、国際共同研究により、アメリカのプリンストン大学で開発されたリアルタイム・ダスト検出器をLHDの真空容器内に設置しました。この検出器は、微小な間隔で銅線を平行に並べたもので、隣り合う2本の銅線の間に電圧をかけて、その間にダストが飛来した際に流れる電流を観測することにより、ダストを検知します。原理は簡単ですが、検出する電流は極めて微小で、周囲に設置されている大電力機器からのノイズの影響を受けやすいため、正しい信号だけが得られるように、特別な回路設計が施されているのがこの検出器の特徴です。この回路設計を例えると、夏に植物の種(信号)をまくと、あっという間に雑草(ノイズ)に囲まれてしまうため、雑草を取り除いて種をまいた植物だけにする操作、といえます。
検出できるダストのサイズは銅線の間隔で決まります。ダストが銅線に触れていなくても、近接すれば電流は流れますが、銅線の間隔に対してダストが小さすぎると電流は流れません。これまでの研究により、LHDで観測されるダストのサイズは10ナノメートル(1億分の1メートル)から20ミクロン(10万分の2メートル)程度と分かっています。設計した検出器の銅線の間隔は25ミクロンで、事前の試験により、数ミクロン以上の大きさのダストを検出できることを確かめました。そのため、この検出器により、LHDで発生するダストを検出することが可能です。
この検出器をLHDに取り付けて、プリンストン大学の研究者と一緒に測定を行いました。そして、ダストの捕集量は、1平方センチメートル当たり、毎秒数ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)という初期結果が得られました。この捕集量は、これまでの他の装置での結果に比べると少なく、将来の核融合発電所を考えた場合、損耗量が少ないことを示しており、好ましい結果といえます。今後は、プラズマ条件の違いや、10分を超すような長時間プラズマにおけるダストの捕集量を調べる予定です。
このダスト検出器は、LHDの他に、いくつかの大型のトカマク型装置にも設置されているため、ダストの発生頻度に関して、ダストの材料やサイズが異なるヘリカル型やトカマク型の装置間の比較研究の進展も今後期待されます。

ダスト検出器の写真。一枚の板のようにしか見えませんが、25ミクロンの間隔で銅線が張り巡らされています。
LHDに検出器を取り付ける前に、共同研究者のプリンストン大学のスキナー博士と信号の確認をしている様子。下に見えるのがダスト検出器。

 

以上