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平成26年2月10日
ヘリカル型核融合炉へ向けた超伝導コイルの冷却設計
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合科学研究所では、将来の核融合発電に向けてヘリカル型核融合炉(FFHR)の設計研究を進めています。FFHRでは、プラズマを閉じ込めるための磁場を発生させる超伝導コイルの大きさが、大型ヘリカル装置(LHD)の約4倍にもなるため、このような巨大な超伝導コイルの開発に向けて、いくつかの工学的課題を解決しなければなりません。今回は、その内のひとつである超伝導コイルの冷却に関する課題とそれに対する研究について紹介します。

 超伝導コイルは電気抵抗がなく、大きな電流を流せるため、強力な磁場を発生させることができますが、極低温に冷却されて初めてその性能を発揮します。LHDでは、ヘリカルコイルとポロイダルコイルという2種類の超伝導コイルを使用していますが、ヘリカルコイルは液体ヘリウムを、ポロイダルコイルは超臨界圧ヘリウムを用いてマイナス269℃程度まで冷却しています。超臨界圧ヘリウムとは気体でも液体でもない状態ですが、低温のヘリウムを臨界圧力と呼ばれる圧力よりも高い数気圧以上にしたもので、ガス(気体)のように扱いやすく、かつ、液体のように多くの熱を奪うことができるため、冷却剤として非常に優れた性質を持っています。
ヘリカルコイルは、超伝導導体を液体ヘリウムを満たした容器の中に浸して冷却していますが、ポロイダルコイルでは、非常に細い超伝導線材を多数より合わせた束をステンレスの管の中に収めたケーブル・イン・コンジット(CIC)導体と呼ばれる導体の中に超臨界圧ヘリウムを強制的に流して、直接超伝導線材を冷却しています。最近の超伝導核融合実験装置では、冷却性能が高いことなどから、このポロイダルコイルと同様の方式が採用されています。しかし、将来の核融合炉では、超伝導コイル内で発生する熱がさらに大きくなるため、今よりも冷却性能を高める必要があります。フランスで建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)では、冷却のための超臨界圧ヘリウムの流量を確保するために、中心部に1 cm程度の流路を設けて冷却性能を高めたCIC導体が採用されています。FFHRの超伝導コイルでも、同様の方式の超伝導導体を有力な候補の一つとして、設計研究を進めています。
核融合炉の超伝導コイルでは、プラズマに近い位置で超伝導導体内部の発熱が大きくなります。そのため、FFHRのヘリカルコイルでは、最内層の導体は常にプラズマに最も近い経路を通ることから、導体内での発熱が非常に大きくなります。より多くの熱を奪うためには超臨界圧ヘリウムの流量を増やす必要がありますが、1 cm程度の流路では出入口の圧力差が大きくなってしまうため限度があります。流路を拡げれば流量を増やすことができますが、超伝導線材を納めるスペースが狭くなるため、必要な本数の超伝導線材の確保が難しくなります。これらを両立させるため、超伝導導体の形状と冷却条件を様々に変化させて計算を行い、設計研究を進めました。その結果、FFHRでは超伝導導体1本当たり10万アンペアの電流を流す必要がありますが、そのために必要な超伝導線材を収めるスペースを確保しつつ、冷却に必要な超臨界圧ヘリウムを流すことが可能となる設計条件を見つけることができました。
今後はさらに設計の最適化を進めて、実際に超伝導導体を試作し、実験でその性能を確認することを計画しています。

以上