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平成26年2月24日
核融合発電所の全体像を構成する ―システム設計研究―
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合科学研究所では、将来の核融合発電を目指してヘリカル型核融合炉の概念設計を進めています。その際、核融合炉から取り出した熱により発電するという核融合発電所全体のシステムを考慮して、発電設備をはじめとする他の設備と調和の取れた設計を行う必要があります。ここで重要となるのがシステム設計です。今回は、ヘリカル型核融合炉、そして核融合発電所の全体像を決めるシステム設計研究について紹介します。

 核融合炉はたくさんの機器の集合体です。プラズマに面した領域には核融合で発生した熱を取り出すための機器やプラズマの中の不純物を取り除く排気装置があり、その外側にはプラズマを閉じ込める磁力線のかごを作る超伝導コイルが、さらにはプラズマに燃料を供給する装置やプラズマを加熱する装置、プラズマの状態を計測する装置などが置かれます。核融合発電所全体を見ると、超伝導コイルを冷やすための設備、核融合炉から取り出した熱を使って発電する設備、燃料を精製する設備、メンテナンスをする設備など、核融合炉本体以外にも数多くの設備があります。これら核融合発電所を構成する機器は、そのひとつひとつそれ自体が複雑なシステムですが、ひとつの機器の性能が別の機器の性能に影響したり、お互いに場所を取り合ったりするため、それぞれを独立に設計することはできません。また、発電所全体として、安全性や信頼性を高めるとともに、できるだけ安く短い期間で建設できるような調和の取れた設計が求められます。このため、核融合発電所全体を一つの大きなシステムとして捉え、各機器の間のバランスを取りながら設計の全体像を描く必要があります。それを行うのがシステム設計の役割です。
システム設計の一番重要な仕事は、核融合炉のサイズや磁場の強さ、発電量などの基本仕様を決めることです。これらの仕様は最終的には個々の機器の詳細な設計を受けて決まるものですが、そのためには機器の試作や大規模な計算機シミュレーションを行う必要があり、時間やお金がかかります。また、そもそも機器の設計をするためには、設置スペースや受ける力や熱の大きさなどの条件を設定する必要があります。そこで、まず基本仕様にある程度の当たりを付けることを行います。これに使われるのが、核融合発電所を構成する機器やプラズマなどの要素全てを簡単なモデルで表現したシステムコードとよばれる計算プログラムです。システムコードは簡単なモデルを使っているので計算が速く済み、条件をどんどん変えながら調べられるのですが、ヘリカル型核融合炉は3次元的で複雑な形状をしていることから、既存の簡単なモデルではその性質をうまく再現することができませんでした。そこで、大型ヘリカル装置(LHD)での実験や計算機シミュレーションの結果を活用して、いろいろなプラズマや超伝導コイルの形に対するデータベースを作り、高速な計算と正確な性能予測が両立する専用のシステムコードを開発しました。開発したシステムコードは、現在、概念設計が進んでいるヘリカル型核融合炉の基本仕様の決定に活用されています。
基本仕様が決まると次のシステム設計の仕事は、それぞれの機器の具体的な形状を考慮して、お互いの干渉や設置スペース、メンテナンス方法などについて検討することです。また、各機器をどのように動かして核融合炉を運転するのかということも、システム全体から考える必要があります。今後は、そうした検討を各機器の詳細な設計と並行して進め、そこで得られた方策を再び機器の設計に反映させるという作業を進めていきます。

 

以上