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平成26年7月14日
高エネルギー粒子を閉じ込める -損失イオンの検出-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 大型ヘリカル装置(LHD)では、磁場に閉じ込められた高温・高密度のプラズマを、プラズマ中のイオンや電子よりも高いエネルギーを持った粒子により加熱しています。こうした高エネルギー粒子は、高い電圧で高エネルギーに加速した水素ビームを外部からプラズマ中へ入射したり、電磁波を入射してプラズマ中のイオンを選択的に加速して高いエネルギーの粒子にしたりして生成します。プラズマをさらに高い温度にするためには、プラズマ加熱源である高エネルギー粒子を効率よく閉じ込めることが必要ですが、エネルギーが高いため、プラズマを閉じ込める磁場のカゴの形状などの条件によっては、プラズマから逃げてしまうことがあります。今回は、LHDで行われている、プラズマから逃げて損失する高エネルギー粒子を計測してそのプラズマ中での振る舞いを調べることにより、高エネルギー粒子の閉じ込め条件の最適化を図る研究について紹介します。

 プラズマを加熱する高エネルギー粒子はイオンなので、磁場のカゴに閉じ込めることができますが、プラズマ粒子の数十倍から数百倍という高いエネルギーを持っていることもあり、磁場のカゴの形状によっては、一部の高エネルギー粒子が磁場と相互作用して波を励起し、その波が高エネルギー粒子をプラズマの中から損失させてしまうことがあります。このプラズマから損失した高エネルギー粒子を検出して、その振る舞いを詳細に調べることにより、高エネルギー粒子がプラズマから逃げてしまう条件を明らかにすることができます。そして、その結果に基づいて、高エネルギー粒子を閉じ込める磁場のカゴの形状等を最適化して、プラズマの温度をさらに上げることを目指しています。将来の核融合発電所のプラズマでは、プラズマが燃焼する際に発生する高エネルギー粒子がプラズマを加熱して燃焼を持続させるので、高エネルギー粒子の閉じ込め特性を詳細に調べて、その振る舞いを明らかにすることは重要です。
LHDでは、損失高エネルギーイオンプローブと呼ばれる計測器を開発し、プラズマから少し離れた位置に設置して、プラズマからの高エネルギー粒子(イオン)の検出を行っています。高エネルギーイオンが通過したときに発光する蛍光物質を使って検出位置を同定し、発光の状態と強さから検出イオンのエネルギーと量を計測します。磁力線に巻き付いて運動するイオンの軌跡がエネルギーの大きさによって変わる性質を考慮すると、プラズマから飛び出て検出器に到達するまでの高エネルギーイオンの運動を明らかにすることができます。
この損失高エネルギーイオンプローブを使って、高エネルギーイオンの起こした波により、高エネルギーイオンがプラズマから逃げてしまう現象を詳細に調べました。そして、実験結果の解析を計算機による数値シミュレーションと並行して進めたところ、プラズマを閉じ込める磁場のカゴの形状を工夫することにより、高エネルギーイオンが波を励起しても、閉じこめられている高エネルギーイオンがプラズマから逃げない条件を明らかにすることができました。今後は、高エネルギーイオンを閉じ込める磁場のカゴの形状の最適化をさらに進め、将来の核融合発電所の設計研究に生かします。

以上