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平成26年12月1日
プラズマを長時間維持する -加熱の増強による定常プラズマの高性能化-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 核融合によりエネルギーを発生させるためには、1cc当たり100兆個以上の密度のプラズマを1億2,000万度以上の高温度にしなければなりません。しかし、このようなプラズマを実現しても、それを短時間しか維持できないのであれば、発生したエネルギーを発電などに利用することはできません。大型ヘリカル装置(LHD)では、温度や密度などのプラズマの性能を上げる研究を進めていますが、それと並行して、高性能プラズマの長時間安定維持に向けた研究にも取り組んでおり、大きな成果を挙げています。今回は、LHDで行われている、加熱電力の増強による長時間維持プラズマの高性能化について報告します。

 LHDでは、電磁波を利用した加熱装置により、プラズマの長時間維持を行っていますが、2013年度には、1cc当たり12兆個の密度で、中心の電子温度とイオン温度がともに2,300 万度のプラズマを48分間維持することに成功しました。これは、高性能プラズマの長時間維持としては、他の装置の追随を許さない世界最高の結果です。
電磁波による加熱手法として、プラズマ中の電子を加熱するECH(電子サイクロトロン共鳴加熱)と、主にイオンを加熱するICH(イオンサイクロトロン周波数帯加熱)の2種類がLHDでは用いられています。ECHで使われている電磁波の周波数は154,000メガヘルツ、84,000メガヘルツ、77,000メガヘルツの3種類で、電子レンジで使われているマイクロ波の周波数2,450メガヘルツの数十倍という高い周波数です。1メガヘルツとは1秒間に100万回振動することを意味します。一方、ICHの周波数は約38メガヘルツで、ECHの周波数の2,000分の1ないしは4,000分の1程度です。これは、水素イオンの重さが電子の重さの約2,000倍であることによります。
これまでLHDでは、ICHとECHを合わせた500キロワットの加熱電力により、密度が1cc当たり4兆個、温度が1,000 万度のプラズマを54分間維持するという、長時間プラズマ維持の世界記録を既に達成していました。これに対して2013年度には、ICH電力940キロワット、ECH電力240キロワットの合計約1,200キロワットに加熱装置を増強してプラズマ性能を大幅に向上させ、それを48分間維持するという、長時間維持プラズマの性能に対して大幅な記録更新ができました。また、ICHに重畳するECH加熱電力を380キロワットまで増加させて、中心の電子温度を4,600万度に高めたプラズマを12分間維持することにも成功しています。
本年度のLHD実験は11月6日に開始しましたが、それに向けて、154,000メガヘルツのECHシステムを増強して、さらに加熱装置の性能向上を行いました。これにより、長時間維持プラズマのいっそうの高性能化を図り、将来の核融合発電所に必要とされている定常プラズマの長時間維持に関連した研究を強力に推進していきます。

以上