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平成27年4月6日
リチウム含有冷却材を使ってプラズマから熱を取り出す
-核融合発電システムを模擬した冷却材循環ループの開発-
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
   

 将来の核融合発電では、水素の高温プラズマから熱を取りだして蒸気タービンで発電します。蒸気タービンで発電する仕組みは火力発電と同じです。ところが、プラズマ自身の持っている熱を直接取り出すわけではなく、核融合反応によって発生する高エネルギーの粒子を周囲の壁で受け止めて、粒子の持つ運動エネルギーを熱に変えてから取り出します。そのためプラズマの周囲には、高エネルギー粒子を受け止めるための厚さ1メートルの壁が取り付けられます。この壁のことを、プラズマを覆う「毛布」になぞらえて「ブランケット」と呼びます。さて、ブランケットから熱を外に取り出すためには、気体あるいは液体の冷却材をブランケット内部に流し、配管を通して外に取り出す必要があります。つまり、冷却材の流れが熱を外に運び出すわけです。取り出した熱で外部の熱交換器を使って水を沸騰させ、その蒸気で発電タービンを回します。
この冷却材として有望視されているのが、リチウムを含有する液体です。液体となる温度が低いこと、空気と反応しないこと、などの様々な特性を考慮して、溶融塩(リチウム、ナトリウム、カリウムといった金属とフッ素の化合物(塩)を混合したもの; FLiNaKなど)やリチウム鉛合金などが主な候補となっています。これらの材料の基礎的な性質はこれまでの研究で徐々に明らかになっていますが、実際に磁場閉じ込め核融合発電システムで使うことを考えた場合は、強い磁場の中で、これらの材料を速いスピードで流す試験が必要になります。液体の流れは熱の取り出しに大きな影響を与えますが、強い磁場の中では、それがどう変化するかが未だ十分に分かっていません。こういった、より実際の核融合発電システムに近い環境での各種試験を実施するために、「熱・物質流動ループOrosh2i-2」と呼ばれる新しい試験装置を開発しました。本装置は、前述のフッ化物溶融塩とリチウム鉛を別々に循環できる2種類のループと、最大3万ガウスを発生する超伝導磁石を有しており、同様の試験装置の中でも世界最高級の性能を誇ります。また、国内外の研究者が自由に使用できる共同研究利用設備と位置付けられています。この新装置を有効に活用し、将来の核融合発電の早期実現に貢献していきます。

以上